—— 一人でいろいろ対応してしまっていると、何かあった場合に立ち行かなくなってしまいますね。
ワンオペ育児は危ういもの。交通事故でそのことが身にしみました。
私に何かあったら、娘たちは大変なことになります。人手不足だからとあきらめずに、登校を手伝ってくださる方たちを本気で探そうと思うようになりました。
愛育学園を卒業後に進学予定の旭出学園までは、それまでの2倍ほどの通学時間がかかります。だから、必死でした。
娘のことを長年見守ってくれている障がい児向けプールのライフガードの男性にも、思い切って頼んでみました。「月に1回ならプールが休みの日があるから、手伝ってもいいよ」と言ってもらえました。
長年の友人に事情を相談して、運転免許を取得してもらいました。
義弟にも頼み込み、仕事の合間に連れて行ってくれることになりました。
登校時のサポートを引き受けてくれる事業所も出て来ました。それもこれも、娘を幼少期から見守ってくださっていた方たちだからこそ、状況を察し、手をさしのべてくださったのだと思います。
——高校2年生の現在、娘さんの登下校はどのようにしていらっしゃるのでしょうか?
中学部に進学後、高等部の現在にいたるまで、娘の登下校は私と夫以外に総勢10人以上の方たちの善意で成り立っています。
基本的に登校時は車です。下校時はラッシュアワーではないため、公共交通機関を利用します。ヘルパーさんやシッターさんに、家まで連れて帰ってきていただいたり、放課後等デイサービスに連れて行っていただいたりしています。
娘にとっては電車の移動時間が唯一、社会との接点になっているのです。親以外の人と、電車を乗り継いで、人や電車を見ることが娘の楽しみになっています
とはいえ、毎日のスケジュールは私が管理し、娘の様子を伝え、こまめな連絡が欠かせません。今日は行けませんという方が出れば、早急に代わりの方にお願いできないかを調整し、私や夫が送迎に入ることも珍しくありません。
まさに、今でも綱渡りの毎日です。
自力で登下校できない障がいや医療的ケアのあるお子さんの通学支援は、全国的に深刻な課題で、送迎のために離職する親も少なくなくありません。どんな子も安心して学べるようになってほしいです。
★第3回オンラインセミナーアーカイブ視聴のご案内★
「障がい児及び医療的ケア児を育てる親の会」は、連続セミナーの最終回「多様性を認め合う風通しのよい社会を目指して」を2023年3月9日に開催しました。お話を伺ったのは、衆議院議員であり、障がい児及び医療的ケア児を育てる親の会顧問の野田聖子さん、障がい児や疾患児の両立支援制度の拡充を4月から実施するJR東日本会長の冨田哲郎さん、障がい児を育てる家族への支援を今年の春闘方針に盛り込んだ電機連合中央執行委員長の神保政史さん。政労使の分野の最前線に立っていらっしゃる当事者や支援者ならではの深い視点に基づくお話をぜひご視聴ください。
第3回 障がい児・医療的ケア児の親と就労「多様性を認め合う風通しのよい社会をめざして」
★「障がい児及び医療的ケア児を育てる親の会」は、朝日新聞厚生文化事業団の共催で連続セミナーを開催しています。過去のセミナーはこちらからご視聴いただけます。
第1回 障がい児・医療的ケア児の親と就労「障がい児を育てながら働く 綱渡りの毎日」
第2回 障がい児・医療的ケア児の親と就労「取り残される障がい児・医療的ケア児の親たち」
★「障がい児及び医療的ケア児を育てる親の会」へ参加ご希望の方はこちらからお申し込みください。
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構成・文/工藤さほ
編集/立原由華里
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