日本の競争力は急激に低下しており、日本企業は世界市場においてほとんど存在感を示せていません。世界各国が順調に経済を成長させる中、日本だけがほぼゼロ成長という異常事態が続いており、日本は先進国の地位から脱落しつつあります。

3月22日、国会の参院予算委員会で発言する黒田東彦日銀総裁。写真:つのだよしお/アフロ

かつての日本は、製造業による輸出が盛んでしたが、今では輸出企業による円買い需要もなくなりつつあります。輸出代金をドルで受け取った日本企業は、国内への支払いや日本人従業員の給与などに充当するため、受け取ったドルを円に変える必要がありました。これは円買い・ドル売りの取引ですから、輸出が好調な時代は常に円買い需要が存在していたわけです。

 

最近は輸出が低調で、生産拠点の海外移転も進みましたから、輸出企業による円買いもなくなりつつあります。加えて「有事の円買い」も消滅したわけですから、日本円を買い支える要因が何も見当たりません。

現在、円安が進んでいる直接的な原因は、米国の金利上昇による日米金利差の拡大です。以前でしたら、こうした要因があっても、輸出企業による円買いや有事の円買いなどによって、過度な円安は防ぐことができたのですが、今はこうしたストッパーがありませんから、限りなく円安が進みやすい状況です。

円が安くなると、輸入される商品の価格が上がりますから、消費者にとっては大きな打撃となります。輸出企業が好調だった時代は円安にも一定のメリットがありましたが、今の時代においては、円安はデメリットの方が大きいと考えてよいでしょう。

今回の円安は、言ってみれば、日本の国力低下という構造的な問題に起因していますから、今後、円安の流れは長期化する可能性があります。しばらく時間が経過すれば、また円高に戻るという期待はあまり持たない方がよいでしょう。


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