オーガニック食品の品質と栄養価について。「アトピー」、「がん」との関係は?


山田:オーガニック食品の方が栄養価は高いと言われることもありますが、有機栽培された食品と従来の栽培方法で作られた食品の栄養成分を比較した研究では、炭水化物やビタミン・ミネラルに関しては通常同程度で、オーガニック野菜は従来の野菜よりもタンパク質の含有量が低い場合があると報告されています。また、「オーガニック」に飼育された牛と従来の方法で飼育された牛から得られた牛乳は、タンパク質、ビタミン、総脂質、微量ミネラルの含有量が同程度であることも報告されています。

編集:品質や栄養価に関しても、オーガニック食品の方が高いと思っていました……。ちなみに、健康リスクとの関連で、分かっていることはありますか?

山田:健康リスクとの関連性ですが、複数の研究で、生後のオーガニック食品の摂取とアトピー性疾患発症との間で、関連性は認められなかった、と報告されています。また、非常に限られたエビデンスから、オーガニック食品とがん予防との関連がある可能性が示唆されていますが、それらは、胎児期の曝露や、農家の職業的曝露によるもので、一般的な成人での暴露との関連は知られていません。

編集:そうなのですね......。ここまでのお話では、オーガニック食品とそうでない食品の差は、あまり明らかではない印象ですが、いかがでしょうか?

山田:そうですね。健康という点では、禁煙や節酒、肥満予防など、健康との関連がよく知られた行動変容の方がよほど大切なことです。それらと比較すれば、オーガニック食品の選択というのは、無視できるレベルの話なのかもしれませんね。

編集:なるほど……。

山田:ただし、大人では問題にならなくても、胎児、小さいお子さんなどでは大人と異なり農薬の悪影響を受けやすい可能性があります。妊婦さんや小さなお子さんへの影響は注意していただいてもよいのかもしれません。

また、有機農業は、一般的に小規模な家族経営の農場で行われており、より環境に優しいかもしれませんよね。

編集:そうですよね。オーガニック食品を選択することで、環境に優しい製法を応援できるのは大きなポイントだと思いました。ただ、「大人の健康」との関係性は、思ったより分からないことが多い、ということが理解できました。

山田:そうですね。

編集:私は喫煙をしないので、健康リスクを考える場合は、引き続き運動不足や肥満に注意し、アルコールの量などに気を付けたいと思います。環境問題を考える上では、オーガニック食品も、できる範囲で応援していきたいなと思いました! 本日もありがとうございました!
 

 

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写真/Shutterstock
構成/新里百合子

 


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