治療が終わっても、全てが元通りというわけではない

 

約5週間ぶりに見る外の世界はとても新鮮で、季節も変わっていました。入院した頃はまだ冬の気配が残っていたのに、外はすっかり春。

入院生活も治療も終えて、これで全て終わった! ……と言いたいところですが、抗がん剤や放射線が体に与えたダメージがかなりしぶといことに驚かされました。

吐き気は退院後も1週間以上続き、下痢は治療終了時がピーク。自宅に帰ってからも2週間以上、下痢との壮絶な闘いが続きました。治療前は「副作用の下痢と言ってもたかがしれているだろう」と甘く見ていましたが、想像を遥かに超えていました。

しかし何はともあれ、治療は終了したのです。そこから時間をかけて副作用は減っていき、失われた体力も少しずつ戻っていきました。

退院から2ヶ月以上経つ今でも、耳鳴りや白血球の数値など、完全には戻っていない副作用もあります。がんの治療はそれほど強力なものなんだな、ということをつくづく思い知らされました。

 

さて、日常生活は戻ってきましたが、一度がんになってしまうとやはり人生は変わったと言わざるを得ず、治療を終えたからといって何事もなかったことにはできません。今後はいかに再発しないかどうかが勝負となってきます。

私の場合、子宮や卵巣は取ってしまったのでそこに関しては心配していませんが、別の部位に転移して再発しないかどうかが不安です。ビクビクしながら生きたくはありませんが、今後も検査を定期的に行いながら、身体をいたわって生活していきたいと思っています。

 


がんになると、人間関係に変化が起こる?


病気になって変わったことは、他にもありました。

がんになって、「人間関係が変わった」という人は多いそうですが、私も同じ。私の場合は、母との関係でした。

実は母とは、過去に絶縁していた時期があります。数年前から再び連絡を取るようになりましたが、年に1、2度実家に行ったり、誕生日祝いなどでたまに会う程度。ところが今回私が病気になったことで、誰よりも支えてくれたのは母でした。

70歳を超える母親にこれほどの心配をかけて、いろいろと世話になって、本当に申し訳ないと思う一方で、母がいてくれなかったら独り身の私はどうしていただろう……と心の底から思います。以前にも書きましたが、母は元看護師で、さまざまな事態に対して非常に肝が据わっていたことも本当にありがたくて、心強かったです。

子どもの頃、受験勉強や運動など、いろんなことを母に支えられながら二人三脚で乗り越えた記憶がふと蘇りました。41歳にもなって、あの頃みたいだと言ったらおかしいかもしれませんが、がんになったことによって母との関係は変化し、絆が確実に強くなったことを感じます。

 

私の周りにいるがんサバイバーの人たちに話を聞いていても、人間関係の変化があったという人は少なくありません。家族にせよ友人にせよ、絆が固くなったパターンもあれば、逆にとても身近な人との間に亀裂が入ったというケースもありますし、人間関係を断捨離したという話もあります。

私にも、がんになったことによって近くなった人もいれば、遠くなってしまった人もいますが、親や近くにいる友人がどれほど自分のことを想ってくれているのかを知りました。病気になってから辛いことばかりでしたが、私にとって本当に大切な存在に気づくことができたのは、唯一の良かったことだと言えるかもしれません。

辛い抗がん剤と放射線治療を終え、ついに退院!
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イラスト/小澤サチエ
構成/山本理沙

 

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