健常者も障がい者も、相談先は多い方がいい

 

――就労移行支援事業所(※)を利用している方も、積極的に採用されているとお聞きしました。仕事とのミスマッチや退職を減らすことにも繋がっているそうですね。
※障がいのある方の就労サポートを行う障害福祉サービスのひとつ。

山本 就労移行支援に繋がっている方は、私たちの会社で何かあったときの悩みや問題を、そこに相談することができます。また、事業所ではきちんとその人が会社で働けるようになるまでの「定着支援」も行なっています。当然、私たち企業とは連携を取り合って就労者をサポートしていくことになるので、社内では把握できなかったメンバーのコンディションを教えてくださったり、一緒に対策を考えることができるのもありがたいです。

 

――支援を受けている人にとっても、会社で何か打ち明けられないことがあっても、窓口をもう一つ持てるということは心強いですよね。

山本 会社以外に相談する先があった方がいいというのはマネージャーについても同じで、マネージャーの相談先として就労移行支援のスペシャリストにもコンサルティングに入っていただいています。私たちの会社で働いてくれているメンバーは、それぞれにコミュニケーションの特性があり、マネージャーが全員を常時フォローするのがどうしても難しい場面もあります。サポート面の悩みを吸収できる窓口があることでマネージャーの心理的な負荷を軽減できれば、よりメンバーたちに向き合えると考えています。

――山本さんのお話をお聞きしていると、健常者と障がい者はくっきりと別れているわけではなく、“イレギュラー”がある前提で、個々の特性に合わせた職場作りをされていますよね。障がい者の方への配慮でもありながら、ユニバーサルデザインのように、誰にとっても居やすい環境に繋がっている気がします。

山本 障がい者雇用におけるマネジメントのコツを聞かれることが多いのですが、お答えすることは障がい者雇用にかかわらず、どの会社でも通用するちょっとした意識だったり、工夫だったりなんですよね。今年で設立11年目を迎えましたが、今も日々、みんなと一緒に試行錯誤を続けているところです。

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「チームワークが苦手な人もいれば、リーダーシップをとるのが得意な人もいて、個々人の強みは実にさまざま。そこで平均点を求めてしまうことは、多様性を認めるという考えにそぐわないし、すごくつまらないなと思ったんです」

後編では、“雇用において多様性を実現するとはどういうことか?“を大きなテーマに、引き続き「グリービジネスオペレーションズ」の社長・山本千晴さんにお話を伺います。
 


撮影/鈴木 迅
取材・文/ヒオカ
構成/金澤英恵