「これは以前経験したことがある」ということと、どう向き合うか


ーー今年40歳を迎え、俳優としてのキャリアは25年以上となる水川さん。常々「演じたことのない役に取り組んでいきたい」とおっしゃっていますよね。

水川あさみさん(以下、水川):「演じたことのない新しい役」に挑戦するのは、「役を通して、知らなかった自分を見たい、知りたい」という興味が大きいから。ずっとそう思ってきましたし、今ももちろん変わりません。

ただ……役者には年齢的にできる役、できない役というものがどうしても出てきますし、日本では特に、年齢が上がると似たような役柄が多くなるという傾向があると思います。そんなこともあって最近は、演じたことがある似たような役であっても、新たに違ったものに見せること、そのための「人間力」を養うことが、必要なことかもしれないと思うようになってきました。もちろん、今回のような新しい役にはどんどん挑戦していきたいのですが、外側に広げるだけでなく、似たような役柄なら以前とは異なる表現、より深いものにすることを課題にしていこうと今は思っています。

 

水川:長く生きていると、「これは以前経験したことがある」ということも増えてきますよね。年齢を重ね、キャリアを積む過程で「何が大切か」「何を目的にするか」という意識にもいろいろな変化がありました。私は10代の頃からこの仕事を始めましたが、10代、20代はとにかく「作品に出演すること」「作品と関わっていくこと」を第一の目標にしていました。それが30代になった頃に少し落ち着き、気がつけば自分がやっていきたいもの、関わってみたい人というのが少しずつ明確になっていた気がします。さらに30代後半から40歳を迎えた今にかけては、ようやく自分の役者としてのあり方も分かりかけてきたような……そんなことを感じています。

 

ーー仕事に対する気持ちにも変化がありましたか。

水川:以前は日常生活と役者の仕事は「まったくの別物」と思ってきました。でも、日常生活での経験したことや感じたことが役ににじみ出て、反対に役で得た知識や経験が日常生活や自分の人生にも影響して……ということは多く、「実はすごく繋がっているんだな」と後になってわかってきたことがたくさんあります。

だから今後は、その繋がった輪をどんどん大きくするように……大きくというか、螺旋のように少しずつ上へ上へ、高みを目指しながら、成長していけたらいいなと思っています。それで最終的には……もし私が死ぬまで役者を続けていたとしたら、最後には一言、「うん」というセリフを言うだけでも、観ている人を納得させられるような、そんなお芝居ができるようになっていたら面白いだろうな、なんてことを考えています。