—— 休校期間中に旭出学園に入学されたということは、しばらくは通学できなかったのですね。

はい。旭出学園の入学式は欠席し、その後も登校することはできないまま。30分ほどのオンライン授業はありましたが、娘は理解できず、私が代わりに参加していました。

当時娘はよく「愛育に行く」と言っていました。そもそも愛育を卒業したことを理解できていなかったようです。そのため数ヵ月にわたり、愛育学園を一緒に見に行きました。休校中なので電気が消えています。校長先生がいらっしゃるときは、中に入れてくださいました。娘は誰もいない校内を歩き回り、10分もしないうちに「帰ります」と自ら言って、私と帰宅することを繰り返しながら、自分が卒業したということを少しずつ受け入れていきました。
 

やがて隔日登校できるようになりました。

 

はじめのうち、感覚過敏でマスクをつけることができなかった娘ですが、担任の先生が上手に指導してくださり、マスクを装着することができるようになったこと、非常にありがたく思っています。

中学校入学寸前に、コロナによる一斉休校。娘は小学校を卒業したことを理解できず...【障がい児を育てながら働く⑰】_img0
旭出学園中学部の主任の先生と娘。親身のご指導で、校庭での朝のランニングもコースを外れずに、気持ちよく走れるようになりました。

—— 新型コロナウィルスによる緊急事態宣言下で、多くの方が大変な思いをされましたが、とりわけ障がい児、医療的ケア児を育てていらっしゃるご家庭は大変だったのではとお察しいたします。

医療的ケアの必要なお子さんがいるご家族はさらに恐怖の日々だったのではないでしょうか。風邪気味や咳が出ているときなどにマスクを着用するというエチケットが定着してきたのはよいことだと思います。体の弱い人、体力のない人たちに目線を合わせて配慮することは、あらゆる人の公衆衛生を守ることにつながります。

しかし当時、なかなか新型コロナウィルスの恐怖が払拭される気配はありませんでした。このままでは私たちのような家族はつぶれてしまう。そのような思いから、親の会の活動を拡大させ、2021年11月から12月にかけて新聞や通信業界で働く当事者アンケートを実施。翌年4月その結果について厚労省で記者会見を開き、新聞労連と共催で親たちの実態報告をオンラインで開催したことで、会に参加する当事者が増え、活動が徐々に広がり始めたのです。

★第3回オンラインセミナーアーカイブ視聴のご案内★
「障がい児及び医療的ケア児を育てる親の会」は、連続セミナーの最終回「多様性を認め合う風通しのよい社会を目指して」を2023年3月9日に開催しました。お話を伺ったのは、衆議院議員であり、障がい児及び医療的ケア児を育てる親の会顧問の野田聖子さん、障がい児や疾患児の両立支援制度の拡充を4月から実施するJR東日本会長の冨田哲郎さん、障がい児を育てる家族への支援を今年の春闘方針に盛り込んだ電機連合中央執行委員長の神保政史さん。政労使の分野の最前線に立っていらっしゃる当事者や支援者ならではの深い視点に基づくお話をぜひご視聴ください。

第3回 障がい児・医療的ケア児の親と就労「多様性を認め合う風通しのよい社会をめざして」


★「障がい児及び医療的ケア児を育てる親の会」は、朝日新聞厚生文化事業団の共催で連続セミナーを開催しています。過去のセミナーはこちらからご視聴いただけます。

第1回 障がい児・医療的ケア児の親と就労「障がい児を育てながら働く 綱渡りの毎日」

第2回 障がい児・医療的ケア児の親と就労「取り残される障がい児・医療的ケア児の親たち」

★「障がい児及び医療的ケア児を育てる親の会」へ参加ご希望の方はこちらからお申し込みください。

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構成・文/工藤さほ
編集/立原由華里
 


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