こんにちは!
昨年、『母とヨーロッパへ行く』という本を上梓した私ですが、この夏は母と一緒でもヨーロッパが目的地でもない、「ひとりニューヨーク旅」をしてまいりました。今回は、その一人旅の行き先としてニューヨークを選んだ理由をお話したいと思います。

イースト・ヴィレッジとグリニッジ・ヴィレッジを結ぶ通り。趣のあるビルが連なります。この外階段(非常階段)がまさに“ニューヨーク”。新しいビルにはないものです。
 

旅のきっかけは、ジャケットの写真が気に入って何の気なしに買った『ブルックリン』という映画です。主人公の女の子の色鮮やかでレトロ感のあるファッションがとてもかわいくてまさに「ジャケ買い」しました。
時代は1950年代。アイルランドの田舎の街から、ニューヨークのブルックリンに移住してきた女性の成長物語です。時代や主人公のバックグラウンドは全く違いますが、ティーン・エイジャーのころの自分を懐かしく思い出しました。

今回のひとりニューヨーク旅のきっかけとなった映画『ブルックリン』のDVDジャケット。主人公のファッションに一目ぼれして思わず「ジャケ買い」しました。

その頃の私はニューヨークに恋焦がれていました。ウッディ・アレンの映画が大好きで、ウォークマンにはアメリカのポップス界を席巻したデュオのホール&オーツ、アメリカの高校生が使うようなスラングに憧れて、愛読書は米語口語辞典。その地を一度も踏んだこともないのに「アメリカ最高!」と信じている少女でした。でも、大学生になり、ニューヨークだ、アメリカだと言っている自分があまりにもステレオタイプのような気がして、いつしか恥ずかしくなっていったのです。
卒業する頃にはアメリカを横目で見ながらも、「やっぱり歴史と伝統のヨーロッパよね~」となっておりました(恥)。まあ、青かったのですね。

大好きな作家のひとり、高橋源一郎さんがラジオで語っていたコトバがいつも心の隅にあります。

「人生の半分は伏線、年齢を重ねた後半戦が解答編である。
後半の伏線の回収が驚くほど面白い」

人生において「伏線の回収」とはまさに小説家らしい表現ですよね。人生は物語だとか舞台だとかによくなぞられているからでしょうか、私にはこのコトバがすんなり入ってきました。伏線とは、小説の前半部に書いてあった事柄が、後半で実はこういうことに繋がっていたのですと答えを出す物語技法。前半と後半とでは何の関係性もないように見えていた事柄が、実は時空を超えて繋がっていた! ってとても素敵ではないですか。
なぜ、あの頃はあれがあんなに好きだったんだろう。なぜ、あの時こうしなかったのだろう。なぜ、あの時この道を選んだのだろう。私自身、人生の後半にそれらの謎解きをしたいといつも心のどこかで思っていたのです。

50歳を過ぎた今の私は、まさに「人生の伏線の回収期」に入ってきました。ちょっと大げさですが、今回のニューヨーク旅も、わが若かりし頃のそうした“伏線”の何かしらの回収となるのでは? という期待がむくむくと心の中に広がってきました。そこからは早いです。旅の手配は得意分野ですもの。仕事のスケジュールを確認し、飛行機をさっさと予約し、旅程を立て始めました。
旅程には、ミュージカルを観る、演劇の舞台となった場所や映画のロケ地を訪れるなど、英語劇サークルに所属していた学生時代の自分が聞いたら飛び上がって喜びそうな予定もいれました。母と一緒だとなかなかできない、街中や公園をたくさん歩く予定も。長年、会いたいと思ってなかなか会えなかった大好きな友人と約30年ぶりの再会も! 

ホテルの窓からエンパイアーステートビルが! まったく予想外だったので最初に見たときはテンションがぐっと上がりました。

しかしながら、旅慣れているはずだった私、意気揚々と到着した空港であやうく騙されそうになりました(苦笑)。旅のはじまりからこんな状況で伏線の回収は大丈夫なのでしょうか・・・。
次回は、そのハプニングも含めて「旅慣れモードの人こそ気をつけたいこと」をお話します。ではまた来週お会いしましょう!
 

 

『母とヨーロッパへ行く 母+娘=100歳~の旅』

太田篤子 著 11月22日発売 講談社刊 144ページ 1400円(税別)

持って行ってよかったおすすめの持ちもの、ホテルの検索の方法、ホテルへ直接予約するときのメール例なども載っています。楽しく安全な母娘旅のためにお役立てくださいませ。

ダイジェストで試し読み!

第1回「母は旅のベストパートナー?」はこちら>>
第2回「今こそヨーロッパの田舎へ」はこちら>>
第3回「ホテル選びに最大限の情熱を!」はこちら>>
第4回「眺めのいい部屋でシャンパンを」はこちら>>
第5回「私がホテルに求めるもの」はこちら>>
第6回「母にとって、楽しかった旅の条件とは」はこちら>>
第7回「母との旅の食事問題」はこちら>>
第8回「旅のファッションについて①」はこちら>>
第9回「旅のファッションについて②」はこちら>>
第10回「旅のファッションについて③」はこちら>>
第11回「旅の交通手段について①」はこちら>>
第12回「旅の交通手段について②」はこちら>>
第13回「旅の交通手段について③」はこちら>>
第14回「お土産問題」はこちら>>
第15回「母との旅でいちばん大切なこと」はこちら>>
最終回「さて、どこへ旅しよう? ―――旅の目的地問題」はこちら>>
番外編「見映え&快適! 旅ファッション上達術」はこちら>>
番外編2「子育てを終えた母たちへ、一人旅のススメ」はこちら>>