スタイリングディレクター大草直子著『飽きる勇気〜好きな2割にフォーカスする生き方』より、「変化を恐れず自分軸で生きるアイデア」を一日ひとつずつご紹介します。

 

私は、27歳で結婚して、長女を出産し、その後30歳で離婚をしましたが、この経験は、やはりひとつの転機でした。
会社を5年弱で辞め、中南米へ遊学するなど、自由に、気持ちの赴くままに生きていたけれど、それはすべて自分で考え、決めて選んだ道。たとえ、世間一般の同級生たちとの歩み方とは違っていても、自分で納得して進んだ道でした。
でも、離婚は、いわば不可抗力みたいなもの。私ひとりでは、決められないのはもちろん、言い出したのは彼からでした。

 

思えば、高校生で留学をしたときも、中南米に行ったときも、存分に楽しみましたが、やっぱりどこか実直な部分はありました。アメリカでは、同級生のなかにお酒を飲んだりドラッグをやっている子だっていましたが、私はいたってまじめ。ホームステイ先でベビーシッターをしたり、バーベキューをしたり、教会に行ったりという感じ。本当に、品行方正で素直な高校生でした。
その根底には、「ちゃんとしてないといけない」――そんな気持ちがあったように思います。 だから、彼から離婚を切り出されたときも、別れて寂しいという気持ちよりも、「親に申し訳ないな」と思ったほどです。
離婚の原因は、仕事で地方に単身赴任していた彼に対して、私は東京で娘とふたり暮らし――その生活スタイルのすれ違いによるものです。
両親に離婚報告に行ったときも、「あなたが彼と一緒に住まないからよ」とか「仕事を辞めないから」とか、そういうことは一切言われませんでしたし、怒られたり、責められることなんて、これっぽっちもありませんでした。
反対に、母からは「夫婦生活がうまくいってないなら離婚するべき」なんて言われたくらいです。拍子抜けしてしまうような母の言葉で、「ちゃんとしていなくちゃ」という殻が、はがれ落ちていったような気がします。

しばらくは自分を責める辛い時間を過ごしましたが、その後、すごくラクになりました。
とっても生きやすくなったし、毎日が楽しくなりました。いろんな人との出会いも増えて、そんななか、いまの夫とも出会ったのです。

そして彼との出会いもまた、私のフレームを外してくれる大きなきっかけになりました。
離婚後は、シングルマザーであることを隠したこともないし、負い目に感じたこともありません。でもやはり、長女を連れて彼と一緒に暮らす、という話が出たときは別。ちょっぴり不安を感じました。
そのとき彼が言ったのが、「君の手や髪の毛、瞳を美しいと思うように、僕はあなたが歩んできた人生を美しいと思う。彼女はあなたの人生の一部なのだから、ともに愛していくのは当然じゃないか」――そんな言葉でした。
私は離婚を経験しても、まだまだ自分が作ったフレームの中で、もがいていたんだ――、彼のひと言で、そう気づかされました。
結婚して15年になりますが、実際、彼は前の夫との子供である長女にも本当に愛を持って接してくれていると感じます。
いまでは長女と夫はとても仲良しです。ふたりで好きなロックコンサートに出かけたり、アメリカに旅行したりしています。

「失敗してはいけない」
「大人として、母としてちゃんとしてないと」
「30代はこんな役職でいないと、40代ならこれくらいの収入がないと」
――そんな世間のものさしにとらわれて、自分で設けた「枠」のなかに自分を押し込めなくていいのです。そんなことは意味のないこと。私がそうだったから、心の底からそう思います。

仕事を通じて、多くの女性たちに会ってきました。
皆さん、すごく真面目に世間の「枠」と向き合っているような気がするのです。
でも、「枠」や「しがらみ」をひとつずつ外してみると、もっと軽やかでラクに生きられるのです。それはもう、肩こりがなくなったような軽やかさ!  
これからもっとお伝えしていきたいなと思っています。
 


出典:大草直子著『飽きる勇気〜好きな2割にフォーカスする生き方』(講談社刊)
取材・文/畑中美香


覚えておきたい!
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