スタイリングディレクター大草直子著『飽きる勇気〜好きな2割にフォーカスする生き方』より、「変化を恐れず自分軸で生きるアイデア」を一日ひとつずつご紹介します。

 

飽きっぽいと自覚している私ですが、自分にだけは飽きたくありません。飽きることなく、最後まで愛し続けたい、と思っています。それができるのは、夫でも子供でもなく自分だけかもしれません(笑)。
そのためのツールとなるのが、ファッションやメイクです――48歳になったいま、皆さんにはそう伝えたいです。  だからこそ、人と同じである必要なんてないし、周りの目だって気にしなくていい。もちろん、飽きないために変わっていっていいものですし、同じスタイルでい続ける必要なんてない、心からそう思っています。   

 

こんなふうにファッションについて自由に捉えられるようになったのは、ベネズエラ出身の夫の存在が大きかったような気がします。 
出版社を辞め中南米に行き、帰ってきた私が好きだったファッションは、ちょっぴりセクシーだったり、エスニックな色合いやインターナショナルな香りのするスタイル。  
たとえば、ビビッドな色合いのスカートだったり、ボディラインが強調されるようなワンピースや、背中が大きく開いているようなカットソー――ただ、そんな服を着ていくと、「今日はどうしたの?」とか「なんだか強めだね」って言われたりして……。  
何気ないひと言で、自分をすごく否定されているような気持ちになり、ファッションに関して、とっても揺れている時期がありました。
そんなときに夫は、「セクシーでいいじゃん、インターナショナルで、エナジェティックで、エスニックですごくカッコいい!」と褒めてくれるのです。不特定多数の人に向けたファッションをしなくてもいい――彼の言葉にすごく安心しました。

そうやって、徐々におしゃれに関しての「フレーム」みたいなものが外れてからは、誰に何を言われたって大丈夫! だって、おしゃれは自分を好きでいるためにするものだし、いまの私はコレが好きだから! ――そう思えるようになりました。だからこそ皆さんにも、時には世間で言われている「おしゃれ」より、ご自分の「好き」という感覚を優先してほしいのです。
そして、私の仕事は、皆さんの「自分を好きでいたい」「幸せになりたい」という気持ちと、服やブランドが発しているメッセージをつなげるトランスレーター役だ、と思っています。
ですから、どうか、私がお伝えする服のメッセージが、いまのご自身にフィットしなければ、そのときはぜひ、ご自身の感覚を強く信じて自信を持ってください。

「ミモレ」で編集長をしていたころは、たびたびブランドとコラボレーションしてアイテムを作ったり、イベントなどでブランドの魅力を発信していました。が、「大草さんの記事を読んで、思わず買っちゃいました!」と、目を輝かせながら言ってくれる編集部員がいる一方で、興味を示さない部員だっていました。でも彼女には彼女の「好き」があるだけのこと。それでいいのです。けっして、ファッションで自分を追い詰めないでください。 

ただ、同時に20年以上、ファッションを仕事にしてきて思うのは、自分に対する愛情や自信みたいなものは、確実にファッションに表れるということ。
「ミモレ」には、「おしゃれのヒントは、やっぱり街にある SNAP! SNAP!」という、街角スナップ企画があります。メディアの看板、雑誌の巻頭とも言える企画ですから、編集部員が提案してくる候補者を、当時はかなり細かくチェックしていました。
そのときに、私が大切にしていたのが、「スタイルがあるかどうか」という一点。わかりづらいですよね……、私自身そう思いますし、担当部員からも、「この人はどうして良くて、この人はどうしてダメなんですか?」ってよく聞かれていました(笑)。

スタイルがある人とは――。 
自分の体を認めていて、美しく絶妙なサイジングで服を着ているか、おしゃれを表す女性像に覚悟があるか――を私は見ていました。
そう、おしゃれは「選択」の積み重ねだと思っています。それも、「みんなが持っているから」とか、「夫の好みだから」という、他人軸での選択ではなく、「自分が好きだから」と、〝自分軸〟であることが大切です。
おしゃれだな、とか、素敵ね、と感じる人には、そんなふうに自分目線の「好き」を、ミルフィーユのように重ねてできた、雰囲気のような、たたずまいのような、自信のようなものがスタイルとして表れる、そう感じます。
 


出典:大草直子著『飽きる勇気〜好きな2割にフォーカスする生き方』(講談社刊)
取材・文/畑中美香


覚えておきたい!
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