新型コロナウイルスの感染拡大によって、不安と緊張感の高まる日々。多くの人が先の見えない状況の中で、一刻も早い終息を願って、外出を自粛されていることかと思います。そんなおうち時間を少しでも楽しもうと、NetflixやHuluをガンガン使い倒している人も多いのでは。

今はとにかく平穏な暮らしが再び戻ってくることを願うばかり。しかしその一方で、オタクたちはうっすらと気づいていたのです。この長期にわたる自粛期間こそが、うっかり新たな沼に落ちる好機であることを……。
 

外出自粛のこのご時世に、僕は新たな推しに出会った


とにかくつい軽率に沼にはまることで定評のあるオタクたち。オタクも長くやっていれば、本人たちもその軽率さは自覚済み。だからこそ、平常時はなるべく面白そうな沼に不用意に近づかないよう警戒していたのです。だって、今の推しだけで手一杯だというのに、これ以上推しが増えようものなら、財政が緊急事態宣言。僕の預金口座が先にロックダウンです。

しかし、1日の歩行距離は座椅子⇆トイレの往復のみという平坦な日々が、僕の判断能力を狂わせてしまった。突如YouTubeに現れた「期間限定」の殺し文句につられ、飛び込んだ新たな沼。その名も、ええ、ハイロー沼っていうんですけど。

ハイロー、すなわち『HiGH&LOW』とは、「SWORD地区」と呼ばれる、おっそろしく治安の悪い無法地帯で起きる、不良たちの抗争や仲間同士の友情を描いた人気シリーズ。2015年10月からテレビドラマシリーズ第1期が、さらに2016年4月から第2期が放送され、その後、続々と映画版が公開。去る4月12日まで映画版4作品がYouTubeで無料配信されていました。

当然、昔からその名は知っておりましたが、こちとら教室の隅っこでひとりマルバツゲームをして休み時間を潰してきた根っからの陰キャ人生。レモンサワーを南アルプスの天然水感覚で飲み倒すLDH的なパリピライフとは真逆の青春を送ってきたわけです。そんなこともあって、興味は惹かれるものの自分には合わないと避け続けてきたハイロー沼。浸かってみたら、それはもうレモンサワーどころか度数高めのウォッカみたいな沼だった。

面白さを語り出すと、いくら紙幅があっても足りないわけで。ここはひとつ、このハイロー沼で出会った新たな推しについて語らせてください。

スモーキーがカッコよすぎて今日から僕は無名街の住民です


彼の名は、スモーキー(窪田正孝)。抗争渦巻く「SWORD地区」の一角を占める、無慈悲なる街の亡霊「RUDE BOYS」のリーダーです。この「RUDE BOYS」というのが、簡単に説明するとストリートチルドレンのようなもので、身寄りも戸籍も持たない子どもや老人たちが暮らす治外法権の街・無名街の守護神と呼ばれています。

2020年2月、映画『初恋』記者会見での窪田正孝。 写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ

この無名街。ネーミングだけでオタクを骨抜きにするセンスを感じますが、何と言ってもビジュアルが完璧。岩井俊二の名作『スワロウテイル』の無国籍感に、『ファイナルファンタジーVII』のミッドガルを彷彿とさせる工業感を掛け合わせた無法のスラム街で、鉄錆まみれの廃工場をパルクールを駆使して縦横無尽に駆け回る「RUDE BOYS」に、僕のアドレナリンが異常放出。

細い配管や鉄骨の上を軽やかに走り抜け、垂れ下がっている鎖を伝って階下へと渡り、しまいにはベルトバッグを滑車代わりに超ド級のターザンロープ! もうみんな身体能力高すぎて、全員まとめてSASUKEに出したい。

 
 
  • 1
  • 2