スタイリングディレクター大草直子著『飽きる勇気〜好きな2割にフォーカスする生き方』より、「変化を恐れず自分軸で生きるアイデア」を一日ひとつずつご紹介します。

 

とはいえ、なかなか自分軸で考えるのって難しい、とも感じます。私自身がどうしてきたかを考えてみると、とにかく「I」で考えるように訓練してきました。
I want to ……
I have to ……
I need to ……
こんなふうに。本当に意識的に。
とくに英語である必要はないけれど、日本語ってついつい主語を省いて会話してしまうことが多いのは事実。
たとえば、打ち合わせでカフェに入ったとき。
それが、一日のラストの仕事で、親しい仲間とのカジュアルな打ち合わせであれば、周りがコーヒーを選んでも私は迷わずワインを頼んじゃいます。
でも、多くの人が、「誰も飲まないのか、じゃあ、私もコーヒーにしようかな」って思うのでは?
本当に小さなことですが、そういうことから「私はどうしたい?」を考えるクセをつけるようにしてきました。
もちろん、いまだってそう。筋トレや英会話のレッスンをコツコツするのと同じように、考え方のクセをつけていくのです。

 

これは、子育てにも言えること。親が全部決めて与えてしまっていたら、いざ進路を決めるというとき、文系? 理系? 共学? どっちがいい? って、自分で決められないのは当たり前ですよね。
だから子供たちには、小さいころから「自分で決めなさい」「あなたはどうしたいの?」と繰り返し問いかけています。

また、自分を好きになることも、簡単なようで、実はすごく難しい。
私だって、日々、美しいモデルさんたちと仕事をすれば、「顔が小さくて素敵」「手足が長くてうらやましい」「そんな人たちと一緒に写真に写るなんて!(笑)」と、思ったりもしますが、彼女たちのようになりたいと思ってはいません。自分を責めるファクターを容姿、もしくは子育てなど無意識に探そうとするのは、やめたほうがいい。
私自身忙しすぎて、長女や長男の学校行事にはほとんど行けなかったし、いまだって、10歳という大切な時期に次女としっかり向き合ってあげられていないのでは? と、反省する日々です。
いい母親だとか、いい妻だと思ったことなどもちろんありません。むしろ全然できていない成長過程の母ですが、それでも自分のことが、心の底から愛おしい。そして、死ぬその瞬間まで、そう思い続けたい。
だからこそ、「自分を好きになれません」なんて言われると、もったいなさすぎる! 自分を好きになることはわがままじゃない! ――そう心から思います。  
私の場合、好きになれない自分を変えたかったから、アメリカ留学で環境を変えてみました。憧れていたファッション誌の編集者になれたときには、ちょっぴり自分に自信がつき、自分を愛せるようになったと思います。
ただ、それでもやっぱり、LOVE MYSELFの壁は厚かった……。
確実にその壁を壊してくれたのが、大切な人たちの言葉でした。子供たちが小さかったとき、あまりに忙しく、毎日、毎日「ダメな母親だ」って自分を責めていた私に夫が言ってくれた、「そんなことを言ってはいけない。あなたはよく頑張っているし、ベストマザーだよ」という言葉。
「あなたは、あなたを必要としてくれる仕事を脇目もふらずにやりなさい。子供たちは大丈夫だから」という母の励まし。そして、SNS等を通じて悩みに共感してくれた皆さまからのコメント。
こうした宝物のようなフレーズを胸に、「大丈夫、大丈夫。よくやっている」と毎晩自分を褒めて眠りにつくように。 

嘘のように思えるかもしれませんが、これってすごく効くんです。頭のなかで思うだけでもいいけれど、「私はよくやっている」と声に出して言ってみてください。セルフハグするのも大賛成だし、鏡の中の自分に言ってあげても! 親から褒めてもらえなかったとか、夫が言ってくれない、独身だから――そんなことは関係ありません。自分で言ってあげればいいだけのこと。
お金もかからないし、最も手っ取り早くて、一番効果的です。 今夜からぜひやってみてくださいね。
 


出典:大草直子著『飽きる勇気〜好きな2割にフォーカスする生き方』(講談社刊)
取材・文/畑中美香


覚えておきたい!
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