アクセルとブレーキの位置が逆!!  恐怖の左脚運転


最後の難関が「運転」です。これは料理や仕事とは違い、テストを受け、パスしなければならないという高いハードルがあるのでした……!

運転の復帰も、料理と同じく作業療法の範疇。作業療法のリハビリの時間に、運転復帰のためのシミュレーターで練習を重ねてきました。

右脚と右手が思うように動かないため、アクセルとブレーキは左脚で、ハンドルは左手で操作することになります。

ハンドル操作はすぐに慣れましたが(左手のポテンシャルよ!)、左脚はそうはいきません。というのも、ブレーキが真ん中でアクセルが左側にあるという配置は、右脚で操作していたときと逆さまなのです。

ブレーキやアクセルを踏む際に、いちいち「ブレーキだから右、アクセルは左」と考えてからでないといけません。何も考えずに踏めていた右脚と違って、ワンテンポ遅れてしまうだけでなく、踏み間違えることもしばしば。

「これ、路上に出たあとも、とっさに間違えてしまうんじゃ?」と、心底不安でした。

そんなある日、右脚の足首がけっこう動くことを発見した私。ダメ元で、「一度、右脚で運転してみてもいいかなあ?」と作業療法士さんに聞いてみました。「もちろん! やってみましょう」と快諾してもらい、レッツチャレンジ。

……うん、何も考えなくても自然とアクセル&ブレーキが踏める! その分、左手でのハンドル操作に集中できることが判明しました。

気温が下がって空気が澄み、病院の廊下から真っ白な富士山が見えるように。きれいな富士山を見ると、なにかいいことがありそうな気がした。

「いけるじゃないですか!」と、自分のことのように喜んでくれる作業療法士さん。すぐに主治医を呼んできてくれ、二人に見守られながら緊張の右脚運転に臨みます。

「これなら大丈夫。右脚で、全く問題ないね」と主治医。

 

やった〜。これで車を改造しなくて済むし、旅先でレンタカーだって乗れる! なにより、アクセルとブレーキを踏み間違える心配がなくなるのが最高です。

「退院までに、もっと練習できるから、きっと実技試験は大丈夫ですよ」。「えっ、『実技試験は』ということは、ほかにも試験があるの!?」。「脳の働きのほうも、作業療法と心理の両面でテストするんです」と、美しくほほえむ作業療法士さん。

なに〜、そんなハードルがあったのか……! 

退院に向けての奮闘は、まだまだ続くのでした。


>>次回は、ついに退院!その前夜についてレポートします。


文/萩原はるな
写真/萩原はるな、Shutterstock
構成/宮島麻衣

 

 

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