スタイリングディレクター大草直子著『飽きる勇気〜好きな2割にフォーカスする生き方』より、「変化を恐れず自分軸で生きるアイデア」を一日ひとつずつご紹介します。

 

年齢を重ねるたび、母に似てきているような気がしています。  母は、娘の私が言うのもなんですが、風のように自由に生きている人――70歳を超えても、そんな言葉がぴったりな女性です。
とにかく、どんなことにも「あっけらかん」としていて、執着がありません。娘の私たちが肩透かしを食ってしまう。それくらい、軽やかな存在です。

 

母の言葉には、何度も助けてもらいました。
小学4年生で不登校になったとき「学校がイヤなら辞めてもいい」――この言葉には、子供ながら、安心感を覚えました。
離婚すると報告しに行ったときにも、驚くわけでもなく、「夫婦生活はどうなの?」「夫婦生活がうまくいっていないなら、離婚してもいいかもよ」――この言葉には拍子抜けさせられましたが、離婚は恥ずべきことじゃない、と思えましたし、肩の荷が降りたように、気持ちが軽くなりました。
ちなみにこのフレーズ、私のふたりの妹も聞いたことがあるのだとか(笑)。そんな母に対して、父はやはり元銀行員。
もう少し社会的な視点を持って助言をしてくれます。でもやっぱり、不登校のときも、離婚のときも、私を責めたり、追い詰めたりするようなことは、一度もありませんでした。

家族は、一番身近で、一番小さいコミュニティ。
だからこそ、いつだって安心できて認めてもらえる場所でありたい、と思っています。

末の娘はいま、小学4年生。私が不登校を経験したのとちょうど同じ、ちょっぴり不安定な年齢です。3人目ともなれば、学校から呼び出されても、驚いたりすることなんてゼロですが、先日、先生から電話を頂きました。
聞くと、娘が仲良しのお友達のことをからかわれ、からかった子と、かなり激しくケンカをしたそう。そのときの娘の言動があまりに過激だった、とのことでした。
学校や友達のお母様に謝りに行くことなんて、日常茶飯事(笑)。先生から電話がきたことを咎めたりはしませんが、私も、彼女の行動にはちょっと引っかかる部分がありました。

家に帰って、理由を聞きつつ注意すると、「ママは何にもわかってない!」と大号泣。私も、子供たちの意見や行動は尊重すべき、と日ごろから思っていますが、特に末っ子に対しては、それがうまく伝わらないことも……。
そんなとき、彼女が駆け込むのは夫かお姉ちゃんのもと。
夫は「どんなことがあっても、家族を批判してはいけない」――そういう感覚の持ち主です。認めてなぐさめたり、なだめることが、本当に上手です。
大学生の長女も、「そっか、お友達がからかわれたのが許せなかったんだね」と、彼女の行動をまず最初に認めてくれたのだそう。ジェネレーションZ特有の感覚なのか、長女の個性なのかはわかりませんが、一番上のお姉ちゃんは、共感力やバランス感覚が、昭和生まれの私から見ると、格段に優れていて、勉強になることも本当に多い。

こうして見ると、我が家は、社会の縮図でもあり、ダイバーシティ(多様性)そのものだなと感じます。
次女は、なかなか強い個性の持ち主ですが、まだ10歳。自分をコントロールできないもどかしさみたいなものを感じているような気がしますが、そんな個性も合わせて、抱きしめて生きていけるようにしてあげるのが、親や、家族の役割なのかなと感じます。もちろん20歳の長女、15歳の長男に対しても同じです。サンプルになるストーリーは枚挙にいとまがありません。

親となってみて改めてわかることですが、自分を認めてもらえる場所があるというのは、子供にとって大切なこと。
なかなか一朝一夕にできることではありませんし、3人の子の母になってもまだまだ未熟です。いつだって、子供は「育てている」のではなく、「一緒に育っている」ことを忘れず、互いを認め合える存在が家族であってほしい、そう思います。


出典:大草直子著『飽きる勇気〜好きな2割にフォーカスする生き方』(講談社刊)
取材・文/畑中美香


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