そして、スロヴェニアのコペルも同じくアドリア海に面した港町です。海岸線が少ないスロヴェニアではこの港はとても重要だそう。そのわりに、特にあくせくした感じもなく、皆のんびりしています。町の食堂で食べたシンプルな味付けの魚介スープや、塩とハーブとオリーブオイルで焼いただけの魚は素朴だけれどしみじみと美味しく、気持ちもほかほかに。温かいのは料理だけでなく、街の人々の様子です。

ポレッチのマーケット。野菜や果物、日用雑貨などが売られ、地元の人や観光客で大にぎわい。マーケット好きの母は引き寄せられるようにじっくり見ていました。
魚もぴちぴち新鮮で美味しそうなものがたくさん売られていました。世間話をしながらお買い物を楽しむ地元の女性たち。

リゾート地ということもあるでしょう、旅行者はもちろんですが、働いている人たちものんびりととても楽しそう。観光地にありがちな強引な客引きみたいなのもありません。平日のお昼くらいに訪れたのですが、子供たちが多くみられたことが印象に残りました。ちょこちょこ歩く2~3歳のちびっこ達とその引率の先生たち。校外学習なのかな、カラフルなリュックを背負ってじゃれ合いながら歩いている小学校高学年の子供たち。海風に長髪をなびかせながらベビーカーを押しているパパや、2人の兄弟の面倒を見ているおじいちゃんおばあちゃん。他人の子をにこにこしながらあやす中年の女性など、たった半日いただけなのに、社会全体でとっても子供を大事にしている国だということが伝わってきました。

 

その様子が印象に残っていて、子供が多い国なのかな、と帰国後に調べてみたら出生率は1.58と、日本の1.44よりはまあまあ高いですが、そこまでではなさそう。さらに調べていくと、なんとビンゴ。スロヴェニアは2018年の「子供が健全に過ごせる国ランキング」でシンガポールと並び1,000点満点中987点で175ヵ国中、第1位だったのです。
(※国際NGOセーブ・ザ・チルドレン調査。子どもの生育・発達を阻害する要因の8項目、5歳以下の死亡率、発育阻害、学校に通っていない子どもの割合、子ども労働、早婚、若い時の出産、紛争で住みかを追われた国民の数、子ども殺人の割合が一番少なかった国のランキング)


なるほどね~。今の幸せや暮らしは決して未来永劫のものではなく、きっとまた終わりが来る、ということが長い時代を経てDNAとして刷り込まれているのかな。だからこそ、今の生活に感謝する気持ちと、それを繋げる希望(命)として子供を大切にするという考え方があるように思えました。私たちに見えるのんびり感と幸せ感はその表れではないかなと。

そんな国境近くの町。様々な文化の融合と、その背景にある波乱の歴史を想像すると本当に興味深く、心打たれる場所です。われわれ日本人のように、長い間ひとつの「国」(ありがたいことですが)でいると建物や暮らしの中に他の国の文化が入り込んでいるということはあまりありません。そして、そのありがたみを感じることも。国境近くの町、とってもおすすめです!

 

『母とヨーロッパへ行く 母+娘=100歳~の旅』

太田篤子 著 講談社刊 144ページ 1400円(税別)

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