スタイリングディレクター大草直子著『飽きる勇気〜好きな2割にフォーカスする生き方』より、「変化を恐れず自分軸で生きるアイデア」を一日ひとつずつご紹介します。

家族の一員である前に まずは自分。家族はあくまで「個」の集まりだから【自分軸で生きる練習】_img0
 

私にとって、家族はベースとなる場所です。
仕事はもちろん大事ですが、同じくらい家族との時間は大切です。とはいえ、家族でひとつというよりも、「個」が集まった「チーム」でありたい、そう思っています。
だから、家族で食事に出かけるときも、疲れていたり、気分が乗らないときには、迷わずパスします。
そういう意味では、私は、妻や母である前に、ひとりの女性であり、自分、そして「娘」です。だからというわけではありませんが、両親との関係は、50歳近くなったいまでも、逆転させないように意識しています。
近所に暮らしていることもありますが、しょっちゅう行き来したり、子供の勉強を見てもらったりするのは、娘としてまだまだ甘えさせてね、という気持ちの表れです。実際、いまだに父は、「お前の仕事は大丈夫なのか?」と心配なようです。

 

もちろん、彼らに何かがあれば、真っ先に駆けつけますし、でき得るかぎり時間やお金は惜しみません。それは、私に限らず夫も同じ考えです。
特に夫は、自身の家族が遠く離れて暮らしているということもあり、私の父や母を実の両親のように思ってくれています。
もう10年以上前の話になりますが、アメリカ人と結婚した末の妹が、ふたり目を妊娠中のこと。
マタニティブルーが激しく、日本に帰りたい、という連絡が入りました。彼女の夫は、公務員のため仕事を簡単には休めず、まだ小さな子供もいるから、アメリカまで誰かに迎えにきてほしいと。私は仕事で都合がつきません。「じゃあ私が」と、母が迎えに行くという話になりました。そのとき、夫が「英語もままならず、車も運転できないママがひとりで行くなんて大変すぎる。僕がひとりで行くから」と、仕事を休み、1泊3日というスケジュールで、身重の義妹を迎えに行ってくれたことがありました。
このエピソードは、いまだに妹夫婦が、夫に対して感謝の言葉を口にするほど、私にとっても忘れられない、家族が広く強く「ワンチーム」であることを改めて教えてくれた出来事でした。

また、「チーム」という意味では、第2章でもお話ししましたが、夫婦のキャリアメイクを個々に考えるのではなく、「ファミリーキャリア」として捉えたっていい、と思っています。
末っ子がまだ小さかったころ、テレビに出る機会が増えたり、プロジェクト全体のバジェットを預かるような大きな仕事が増え、私はとても忙しくなっていました。もちろん、夫も忙しい日々。朝出かける前に子供たちを起こして、実家の両親のもとへ預け、そこから学校に行かせるような生活が続いていました。

目に見えて疲れているのがわかる子供たちや私たち自身を見て、何度も家族会議をしました。そして夫に「もしよければ、私が一家の大黒柱になるから、あなたは家にいる生活はどう?」と、提案してみたのです。
夫は、奨学金をもらいながらアメリカの大学を卒業したため、実は大学在学中の18歳から奨学金返済のためにずっと働き通し。「子供や家族と向き合う時間が増えてとてもハッピー」と、快く引き受けてくれ、自身の事業を5年間中断し、主夫業をしてくれました。
キャリアについては、家族を「チーム」と考えて、夫婦のどちらかが一時的にキャリアを止める決断をしてもいいと思うのです。私も今後、彼がキャリアメイクに没頭したときには、自分の仕事を躊躇なくセーブするつもりでいます。

女性だから子育てをしなくちゃいけない、男性だから外で働かなくてはいけない――そんな考えが、いまの社会にフィットしないことは、多くの人が感じているはずです。
そんなとき、共に暮らす家族が、時に「個」として、時に「チーム」として関わり合い、助け合う、そんな相互サポートの役割を担えれば、もっとキャリアは長い目で捉えられるし、自分らしいキャリアメイクができるのだと思います。そして、キャリアプランを長く設定しておけば、焦らずにすむのです。


出典:大草直子著『飽きる勇気〜好きな2割にフォーカスする生き方』(講談社刊)
取材・文/畑中美香


覚えておきたい!
大草直子の「自分軸で生きる方法」

▼右にスワイプしてください▼


第1回「変わることはわがままじゃない」>>
第2回「「逃げたっていい」今いる場所がすべてじゃない【自分軸で生きる練習】」>>
第3回「「モヤモヤ」「閉塞感」から逃れたいという感覚は、人生を変えるチャンス【自分軸で生きる練習】」>>
第4回「仕事が私に自信をくれるはず。 だから、就職浪人してでも 編集者になりたかった【自分軸で生きる練習】」>>
第5回「「ヴァンテーヌ」が 教えてくれたこと。 サルサとの出会い【自分軸で生きる練習】」>>
第6回「飽きることは マイナスじゃない。 飽きたことを 続けるのが一番怖い【自分軸で生きる練習】」>>
第7回「キャリアは3つのステージ、3つの視点で考える【自分軸で生きる練習】」>>
第8回「目の前にあることに「虫」の視点で取り組んだ第1ステージ【自分軸で生きる練習】」>>
第9回「第2ステージは「鳥」の視点で視野を広げ経験や知識をシェア【自分軸で生きる練習】」>>
第10回「キャリアを手放す勇気が時に必要に。空いたスペースに運が転がり込む【自分軸で生きる練習】」>>
第11回「「あなたは絶対にフリーランスが向いている」人生を変えたメンターの言葉【自分軸で生きる練習】」>>
第12回「​70代からは「本質的なこと」に心血を注ぐと決めている【自分軸で生きる練習】」>>
第13回「おしゃれは自分を好きでいるための「ツール」になる【自分軸で生きる練習】」>>
第14回「​離婚と再婚が教えてくれたこと。フレームに押し込めて苦しめていたのは 私自身だった【自分軸で生きる練習】」>>
第15回「​​人と比べなくていい。枠にとらわれなければラクに生きられる【自分軸で生きる練習】」>>
第16回「​自分を好きになること、自分軸で考えることを「練習」すればいい【自分軸で生きる練習】」>>
第17回「​​美容やエクササイズは自分を愛して、労るために。時には思い切りレイジーに【自分軸で生きる練習】」>>
第18回「​​「変わったね」という評価は絶対に気にしない【自分軸で生きる練習】」>>
第19回「​​「離婚する」と報告したとき、母に言われた「拍子抜けする言葉」とは【自分軸で生きる練習】」>>
第20回「​​家族の中心は大人。いつでも夫婦ファーストで」>>