スタイリングディレクター大草直子著『飽きる勇気〜好きな2割にフォーカスする生き方』より、「変化を恐れず自分軸で生きるアイデア」を一日ひとつずつご紹介します。

 

 「いつも楽しそうですね」「どうしたら好きなことを仕事にできますか?」なんて、インタビューなどで聞かれることがありますが――好きなことしかやっていないから、楽しいに決まってる! 答えはいたってシンプルです。
プライベートでは、個性あふれる3人の子供と夫と暮らすステップファミリー。のんびりする時間なんてないほど目まぐるしい毎日ですが、それも全部自分で選んだこと。誰かに何かをやらされているわけじゃないから、大変だけど気持ちはラク。
こんなふうにお話しすると、決まって「え?」という反応が返ってきますが、本当に好きなこと、得意なことしかしていません。やりたくないことをやっていないのです。10のうち、好きな2割しかやっていません。というよりも、できないのです。残りの8割をやらないなんてムリ! と思われる方が多いかもしれません。私の場合はその8割を得意な人、サービスに頼ることにしています。

 

たとえば、私は経営者でもありますが、お金の計算は、時間軸が長くなればなるほど苦手です。だから、会社の年間スケジュールや予算管理は、すごく不得意。そこは、スタッフに信頼をもって任せています。
それに、私自身のスケジュール管理も苦手です。実は8年前には、運転免許の更新を忘れ、現在、免許が失効中。10代、20代に交じって30年ぶりの教習所に通っています……。
また、子供の宿題に根気よく付き合ったり、叱らずに勉強を教えることも難しい。夫も外国人のため、小学生の次女に英語以外の勉強を教えてくれるのは、もっぱら近所で暮らす70歳を超えた父。すっかり甘えてお任せしています。他にもたーくさんありますが、食事の支度だって、面倒だと思うときはパス。迷わず「食べに行こ!」です。

反対に、私が得意なことは、皆さんに「伝える」こと。そしてスタイリングです。好きで得意な2割のことだけにフォーカスしてきた結果、雑誌の編集者から、いまのコンサルティング業にまで、仕事が広がってきました。好きなことに費やす時間は、どれだけあっても足りませんし、アイディアだって次から次へと湧いてきます。愛情と熱意を、かけられるだけかけるのです。
できること、楽しいこと、得意なことをとことん掘り下げて、成長させればいいのです。疲れてしまうのは、全部をこなそうと頑張ってしまうから。
もちろん、2割のことには、時間をかけて徹底的に取り組みます。
それが仕事であればなおさらです。
「結果が出ませんでした、ごめんなさい」は、通用しないと思っていますし、絶対にしたくありません。予算内でやることはやったので、結果が伴わなくても仕方ないですよね、なんてことは言語道断!
というのも、会社を経営しているとはいえ、私の仕事はフリーランスのようなもの。ひとつのプロジェクトの失敗は、2つ、3つと他の仕事にも影響を及ぼすと思っています。だから、クライアントのリクエストには100%以上の結果を出すつもりで取り組みます。当然、時間もかけますし、ひとつのプロジェクトには、代案を4つ、5つ用意しておくのは当たり前です。

たとえば、コラボレーションして洋服を販売するというプロジェクトであれば……、まずは、いま、ターゲットとなるユーザー層が欲しいのはどんなものなのかを取材しますし、店頭に行ったり、競合ブランドの商品をチェックするなどリサーチは徹底的にして、何を作ればいいのか考えます。
いざ、販売するというタイミングになれば、どんな言葉を使えば、皆さんの気持ちにフィットするか、どんな写真を撮影すれば、皆さんの心に届くのか、その時々で考えてます。それでも結果が出なかった、売れなかった。そんなときだってもちろんありますが、そのときは、用意しておいた違う球を改めて投げるのです。イベントを開催して、「服に込めたメッセージをより深く伝える」場を用意するのかもしれませんし、SNSで着回しのスタイリングを紹介するかもしれません。

私自身、イベントなどで前に立つ機会も頂くのですが、そんなときは、お客様の反応は手に取るようにわかるもの。皆さんに響かない話をすることほど苦痛なことはないですし、費やしてくださる貴重な時間やお金を、絶対に無駄にしたくありません。
何を伝えればお客様の心に響くのか、どんなところにブランドやアイテムの魅力やストーリーが詰まっているのか――それがクリアでないときには、徹底的にリサーチしますし、取材します。
だからこそ、自分で服を買うし、お店に足を運んでみるのです。私が携わるファッションというジャンルは、体験を通してでしかお伝えできないし、伝わらないと思うから。突き詰めることも、熟考することも、4つ、5つとプランを練ることだって、大変ではありますが、苦痛ではないのです。
だって、好きなことだから。

2割というのは、フリーランスという働き方での考えかもしれませんが、会社にお勤めされている方だって、全体の4割くらいに集中し、好きな仕事で結果を出すことは、可能なのではないでしょうか? 残りの6割は仮に平均点以下だったとしても、会社にはすでに「貢献」しているはずです。
そうすれば、忙しい時間だって楽しいものになるし、それは必ず、成果として花開いていくのだと思います。それに、どんなことだって、楽しそうにしている人にお願いしたくなりませんか? 特に仕事であればなおさら。楽しんでいるところに、ご縁も信頼も集まるのだと信じています。


出典:大草直子著『飽きる勇気〜好きな2割にフォーカスする生き方』(講談社刊)
取材・文/畑中美香


覚えておきたい!
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