42

『夫のHがイヤだった。』夫婦でこの本を読めますか?【試し読み付き書籍紹介】

0

今回は、夫婦やパートナーとのセックスのあり方について振り返ってみたくなる1冊の本をご紹介します。

 

『夫のHがイヤだった。』(Mio著/亜紀書房刊)

 

きわめて直球、かつ衝撃的なタイトルの本書は、著者であるミオさんが、15年間の結婚生活におけるセックスとセックスレスの軌跡を綴ったドキュメント。アメブロで公開された人気ブログを書籍化したもので、ブログには現在も、その内容に共感し体験をシェアしたいという読者からの投稿が続いています。

ミオさんは夫を心から愛していたにもかかわらず、その性生活は、結婚当初から肉体的・精神的に大きな苦痛を伴うものでした。

「愛しているのに、気持ちよくなれない」

この事実が、ミオさんをいっそう苦しめます。

「セックスさえできれば、夫は機嫌がよく、私たちは幸せでいられるのに…」

夫を気持ちよく受け入れられない彼女は、「私の体がおかしいんだ」と自分を責め、ついにはストレスから摂食障害やうつ病を引き起こしてしまいます。

本書の感想を率直に言えば、序盤は、ひとりで悶々と悩み続けるミオさんとその苦しみにまるで気づかない夫とのすれ違い振りに腹立たしいやら焦れったいやら、何度も苦い思いが込み上げてきました。ただ、読み進めていくうちに、このハードな夫婦の物語には、実は、夫婦やカップルのセックスにおける普遍的な問題がいくつも含まれているように思えてきたのです。

 

たとえば、セックスの場面で相手に正直な気持ちを伝える難しさ、また「性の自己決定権」や「性的同意」に対する意識の低さは、程度の差こそあれ、多くの夫婦やカップル、とりわけ女性側が悩まされがちな問題ではないでしょうか。各章末には、以前ミモレにもご登場いただいた産婦人科医の宋美玄先生が、女性に多いセックスの悩みについてアドバイスする実用的なコラムも掲載されています。もしも今、夫やパートナーとのセックスに違和感を抱いているのであれば、本書のなかに自分と共通する問題点や改善のヒントを見つけられるかもしれません。

気になるキーセンテンスとともに、3週に渡り、試し読み付きでご紹介します。


私たちは、セックスを学ぶことなく大人になった


ミオさんが夫とつき合い始めたのは、大学時代。セックスに関しては、夫にとってはミオさんが初めての相手で、ミオさんも性経験は豊富ではありませんでした。卒業してすぐに結婚したふたりは、セックスの面では拙い者同士だったと言えるかもしれません。もちろん、その拙さは本来、相手の意思を尊重し、思いやるコミュニケーションによって補われていくはず。しかし彼女の夫は、気持ちという目に見えないものに想像力を働かせられる人ではありませんでした。

夫のセックスは、ミオさんの身体をおざなりに触り、飽きるとすぐに「舐めて」と要求してくる自分本位なもの。日常的になっていったこの習慣に、彼女はなぜ「NO」と言えなかったのでしょうか。

「私には、おかしいと思う知識もなければ、彼をリードして気持ちのいいセックスをするテクニックもなかった。したくないときはきっぱり断っていいと、誰もおしえてくれなかった」(P21より抜粋)

みなさんは、「性の自己決定権」という言葉をご存知ですか? それはセックスに限った話ではありませんが、文字通り「自分の性について自らの意思で選べる権利」であり、性の健康の世界的なガイドラインである「性の権利宣言」のなかで唱えられている重要な概念です。これに沿って考えるなら、「セックスを、いつ、誰と、どのようにしたいか」はひとりひとりが自由に決められることで、たとえ夫婦間であっても、単に気分が乗らないという理由だったとしても、どちらかが一方的に我慢して行わなければならないことはないのです。

ミオさんが、夫とのセックスのなかで「痛い」とも「イヤ」とも言うことができなかったのは、充分な性教育がなく、社会における性のタブー感が根強い日本の現状と無関係ではないでしょう。私たちは、性やセックスについて正しく学ぶことなく大人になってしまいました。でもだからこそ、豊かな性生活を実現するためには、まずそれを自覚して能動的に情報を取りに行くこと、そして何より、パートナーと具体的に話し合っていくことが大切なのだと思います。
 

試し読みをチェック!
▼右にスワイプしてください▼

Mio
大阪府生まれ。大学で知り合った同級生の男性と22歳で結婚。夫との夫婦生活が苦痛で、自分はセックスができない身体なのではないかと悩み、摂食障害とうつ病に。その後、セックスレスを理由に夫から離婚調停を申し立てられ、別居を経て離婚。2017年の冬からアメブロに当時を振り返る手記を連載し、大きな話題を集める。現在は、税理士・行政書士・カウンセラーとして、女性起業家のサポート・離婚業務を中心に活動している。

文/村上治子

前回記事「【デリケートゾーンのケアの常識】人に言えない、女性器コンプレックスの治療法」はこちら>>


「オトナのための性教育」記事一覧

第1回「宋美玄先生と考える「私たち、もっとセックスするべきですか?」」>>
第2回「更年期以降をすこやかに送るために、「自前」にこだわるよりも大切なこと」>>
第3回「マスターベーションを教えられる親子関係をめざして」>>
第4回「デリケートゾーンの新習慣! おすすめケアアイテムをピックアップ」>>
第5回「セックスの価値観をリセット①「挿入主義から解放されよう」」>>
第6回「セックスの価値観をリセット②「セックスレスの原因と対策」」>>
第7回「セックスの価値観をリセット③「自分の性欲と向き合うことの意義は?」」>>
第8回「10代の性の現状と学校の性教育〜日本の性教育のいまと未来〜」>>
第9回「家庭でできる性教育ってどんなこと? 〜日本の性教育のいまと未来〜」>>
第10回「性教育は性の幸福感も語れる多様性を〜日本の性教育のいまと未来〜」>>
第11回「50歳で見つけた自撮りヌードの道 〜熟女がありのままの女性性を肯定する方法〜」>>
第12回「性欲との向き合い方に正解はない 〜熟女がありのままの女性性を肯定する方法〜」>>
第13回「夫婦のセックスレス問題、妻側のリアルな本音【30〜40代読者座談会】」>>
第14回「「コンドームは最低の避妊具⁉︎」驚きの避妊最新事情」>>
第15回「緊急避妊薬の市販化どうなる?中絶件数は年間約16万件で求める悲痛な声」>>
第16回「「熟年世代の性の実態」を東大名誉教授がレポート」>>
第17回「産婦人科医とAV男優が考えた「学校ではできない本当に必要な性教育」とは?」>>
第18回「【正しいマスターベーションのやり方】を子供に教えるには?泌尿器科医に聞いてみた」>>
第19回「1年続けた女性ホルモン補充療法、いつまで続けるべき?泌尿器科医に聞いてみた」>>
第20回「久々の性行為で痛みと出血が。もう性行為はできないの?」>>
第21回「夫婦の性交時間は10分以下!? データでみる40代、50代の性のリアル4つの事情」>>
第22回「恋も性も人生もこじらせているあなたへ、読むべき“恋愛指南書”」>>
第23回「男性風俗とは違う「癒しのサービス」女性向け風俗の現状とニーズ」>>
第24回「【その時、緊急避妊薬が必要だった理由】服用当事者たちの声」>>
第25回「 日本初!セクシュアルアイテムブランドが百貨店にオープンした理由と反響 」>>
第26回「むなしい性交が5割…データでみる40、50代の性のリアル【夫婦間レス4つの事情】」>>
第27回「“常に女性が受け身”がセックスレスを生む。まずは、自分の身体を理解することから」>>
第28回「SNSで話題! 学校の保健の先生が「コンドームソムリエ」になったワケ」>>
第29回「セックスレス解消に効果大。夫婦にぴったりの3つのマッサージ」>>
第30回「40代でデリケートゾーン脱毛に挑戦!【ブラジリアンワックス体験リポート】」>>
第31回「40代でデリケートゾーン脱毛に挑戦!【レーザー脱毛の不安、疑問点を解消します】」>>
第32回「男性がセックスを断る理由「母親に思えて無理」の 裏の本音」>>
第33回「【データでみる不倫の実態】善悪を裁くことはできる?婚外性交をする理由」>>
第34回「男性更年期、女性も知っておきたい3つの症状と対処法」>>
第35回「オーガズムが女性の心と身体の健康に大切な理由【産婦人科医が解説】」>>
第36回「性教育は「セックスを学ぶこと」ではない【大人も学びたい性教育&ジェンダー論】」>>
第37回「​家庭でできる性教育「隠れたカリキュラム」とは?」>>
第38回「​【デリケートゾーンのケアの常識】お手入れは女性の新生活習慣に」>>
第39回「​【デリケートゾーンのケアの常識】これだけは実践したい4つの基本ポイント」>>
第40回「【デリケートゾーンのケアの常識】40代からは膣ケアがトラブル解消に」>>
第41回「【デリケートゾーンのケアの常識】人に言えない、女性器コンプレックスの治療法」>>
第42回「​『夫のHがイヤだった。』夫婦でこの本を読めますか?【試し読み付き書籍紹介】」>>
第43回「『夫のHがイヤだった。』セックスは「夫婦の条件」なのか?【試し読み付き書籍紹介】」>>
第44回「『夫のHがイヤだった。』豊かなセックスをかなえるものとは?【試し読み付き書籍紹介】」>>
第45回「わが家の性教育は手遅れ?! 焦った時の頼れる情報サイトがオープン」>>
第46回「日本人のセックスの平均「性交時間は約30分」医師が分析する深刻な男女の溝」>>
第47回「2020年夫婦のセックスレスは5割以上。日本人が性交したくない理由とは?」>>
第48回「​セックスの悩みを助長する「誤解だらけの性知識」」>>