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緊急避妊薬の市販化どうなる?中絶件数は年間約16万件で求める悲痛な声

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1月23日、厚生労働省の検討会が、アフターピル(緊急避妊薬)のオンライン診療による処方について議論を始めたというニュースが飛び込んできました。

本記事で取り上げている、避妊のあり方を考える勉強会『THINK OF HININ』は、まさにそのアフターピルのOTC(薬局での市販)化を求める署名キャンペーンの発起人、ピルコン代表 染矢明日香さん主催のイベント。今回の厚生労働省の新たな動きは、こうした市民の声や活動の広がりが、社会のシステムを変える第一歩になることを示したと言えるのかもしれません。

イベント前半の「日本の避妊法における現状と課題」の講演に引き続き、後半では、人工妊娠中絶やIUS(子宮内避妊システム)、留学先で目の当たりにした海外の避妊事情など、実体験に基づいた話が中心に。

渦中のアフターピルについては、海外の避妊事情に詳しい#なんでないの の福田和子さんが、「日本で入手する場合のハードルの高さ」や「なぜOTC化が必要なのか?」ということについて教えてくれました。


気になるIUS(子宮内避妊システム)の
使い心地は?

緊急避妊薬の市販化どうなる?中絶件数は年間約16万件で求める悲痛な声_img0
以前、ミモレのインタビューにもご登場いただいたNPO法人ピルコンの染矢明日香さん。現在は性教育を広める活動に軸足を置いていますが、根本にあるのは、避妊を啓発し中絶を経験する女性を少しでも減らしたいという強い思い。

第二部では、最初に染矢さんが登壇。自身の避妊や中絶経験から、困った状況に陥る前に正しい知識を身につけることの重要性を訴え、「当事者がもっと声を上げやすい世の中にしていきたい」と思いを語りました。

 

なかでも印象的だったのは、これまで、緊急避妊、人工妊娠中絶、出産をそれぞれ経験してきたにもかかわらず、産婦人科医や助産師から、その後の避妊法について一度も適切な指導を受けたことがなかったという話。

「中絶の後ですら、避妊の指導はなし。その後、第一子を出産した時には、助産師さんから『避妊はコンドームですね』とサラッと言われて終わりでした。結局、日本では、学校はもちろん医療機関でも正しい情報を教わる機会がほとんどなく、避妊法を学ぼうとすると自力で情報を集めるしかありません。でも、一般的なメディアの情報が果たしてどれだけ信用できるのかという不安もありました。」

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右側の6つのイラストは、どれも日本にはない避妊法(殺精子剤は発泡剤系のみ存在)。いずれも女性が主体的に利用でき、避妊効果の高いものも多い。本来避妊は、女性たちが自分の体調や状況に合わせて、最も使い心地のいいものを選択できることが望ましいはず。

自身の経験を通じて生まれたそんな疑問や危機感が、現在のピルコンの前身である「避妊啓発団体ピルコン」を立ち上げるきっかけとなったそうです。

その後、染矢さんは、IUS(子宮内避妊システム)を使用中という40代の女性2名を招いて、この避妊法を選んだ経緯や使い心地などについてパネルトークを展開。日本ではまだ使用者の少ないIUSについて、ユーザーの生の声を聞ける貴重な機会となりました。おふたりの声は以下の通り。

「避妊効果以外にも、生理前の心身のアップダウンが解消。出血の煩わしさからも解放されるなど、いいことづくし。生理のフラストレーションがなくなって、本当に快適です。」

「10代の頃から子宮内膜症を患い、手術も経験。避妊目的よりも、これ以上子宮と卵巣に振り回されたくないという理由で使い始めました。まだ始めて3ヶ月で、軽い痛みはありますがVIOの脱毛に比べればはるかにマシ。装着を諦める要因にはなりません。」

「ただ、日本でIUSを使用していると言うと、時に“性的に過激な人”という目で見られることも。日本人はまだまだ、タンポンや月経カップなど膣に挿入するものに対する抵抗感があるのでは。ましてや子宮に避妊具を装着するなんて、と受け取られるのかもしれません。」

総合的に見れば、その使用感や満足度には、ふたりとも非常に肯定的。「もっと若い頃に知りたかった」「メリットしかない」そして「ぜひ、周囲の人にも勧めたい」と笑顔で語りました。


日本の避妊はないものだらけ。
海外との環境の差に愕然!

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#なんでないのプロジェクト代表の福田和子さんは、国際基督教大学の4年生。若者の立場から、気軽にアクセスできる避妊環境の整備を政府に訴えています。ホワイトボードのグラフを見ると、日本のコンドームへの依存率の高さには驚くばかり。

最後の登壇者は、イベントの共同開催者である#なんでないのプロジェクトの福田和子さん。現役の大学生でもある彼女は、性に関わる政策や社会状況を学ぶためスウェーデンに留学した経験から「日本には性の健康を守るために必要なものがなさ過ぎる!」と一念発起。帰国後にアドボカシー団体「#なんでないの」を立ち上げたのだそう。

「スウェーデンで感じたのは、性の健康を守る環境が日常に溶け込んでいるということ。たとえば、若者が心身の悩みを相談できるユースクリニックは、国内に約250ヵ所。私自身、ピルをもらうためにクリニックの婦人科を受診した際には、先生の側からごく自然なかたちで様々な避妊法があることを教わりました。しかも、日本では見たこともない避妊法がいくつもあってびっくり。『なんで日本にはないの?』と疑問に感じずにはいられませんでした。」

世界の避妊事情を調べてみると、スウェーデンに限らず、先進国と呼ばれる国々には常識的にある避妊法が、日本にはほとんどないことが判明。

「アジアやアフリカを見渡してみても、“コンドームが避妊法の主流”などという国は日本以外にありません。その問題点は、ひとつには、女性が弱い立場に置かれやすくなってしまうこと。さらには、成功率も低いということなんです。」

さらに福田さんは、日本の避妊の現状において早急に解決すべき問題として、染矢さんが署名キャンペーンをスタートさせた「アフターピルのOTC化」を挙げます。

「避妊に失敗してしまった時、事後に飲むことで妊娠を回避できるアフターピルは、女性にとって最後の砦。セックスから72時間以内というタイムリミットがありながら、日本では産婦人科で処方してもらわなければならないためハードルが高い現状があります。しかも、自費診療のため価格も1万〜3万円と高額。さらに、需要が高まる週末は、病院が休診だったり、開いていてもアフターピルの取り扱いがなかったりと、とてもアクセスが悪いんです。

アフターピルは、スウェーデンに限らず、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、フランス、ドイツなど多くの国々で、薬局で気軽に買える市販薬。しかも価格は無料〜数千円。ただでさえ避妊法が限られているのに、アフターピルまで手に入れにくいなんて、日本は本当に先進国と言えるのでしょうか?」

イベントの最後に読み上げられたのは、#なんでないの のサイトに投稿された若者たちの声。

「統合失調症から過食症となり、肥満のためピルが飲めない。避妊法に悩み過ぎて鬱になってしまいそう。」

「ピルをもらおうと勇気を出して産婦人科に行ったら、セックスの経験人数や回数など関係ないことを聞かれて嫌な思いをした。」

「妊娠出産は、自分と相手、発生する命、それぞれの人生を左右するもの。希望すれば、誰もが簡単に行える避妊システムの構築が必要だと思います。」

現代の避妊のあり方を考える勉強会『THINK OF HININ』で語られたのは、これまで想像もしていなかった日本の避妊事情にまつわる問題点。現在、日本の中絶件数は1年間に約16万件。私たちは、この数字をもっと深刻に捉え、避妊法に関する正しい知識や整った環境を手に入れるためにできることについて、あらためて考えるべきところに来ているのかもしれません。

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ライター 村上 治子

1973年生まれ。大学卒業後、アパレル商社、広告制作会社を経てフリーライターに。主にファッションと占いの記事を執筆。今後は、更年期や閉経後の性のことについても探っていきます。興味があるのは「女性らしさ」や「コミュニケーションとしてのセックス」。趣味は10年習っているフラ。夫と思春期の息子がいます。

妊娠の疑問に答えてくれるLINEボットがスタート!
『THINK OF HININ』の主催者でもあるNPO法人ピルコンさんが、このたび、LINEボット『ピルコンにんしんカモ相談』をリリース!「妊娠したかも?」と不安になった時や避妊や検査について知りたい時、LINEに相談するだけで、正確な情報を自動応答で即座に返信してもらえます。誰でも何度でも無料で利用可能。ご自身はもちろん、ぜひ、お子さんや若い女性にお伝えして、困った時、そして困る前に正しい情報を得られる場がある安心感を広めていきませんか? 詳しい情報や利用方法は、こちらの紹介ページよりご確認ください。

撮影/ミモレ編集部
取材・文/村上治子
構成/片岡千晶(編集部)


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