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1年続けた女性ホルモン補充療法、いつまで続けるべき?泌尿器科医に聞いてみた

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なかなか他人には相談しにくい、性にまつわる悩み。病院に行くほどでもないし、ネットで検索してもなかなか信頼できる答えも見つからない。
そこで寄せられたお悩みを専門家や医師に、答えてもらいました。
 

Q. 女性ホルモン補充療法をはじめて1年経ちます。ホットフラッシュ、関節痛はだいぶ改善されました。当初、骨密度低下も検査で指摘されていましたが、今は標準になりました。このままずっと女性ホルモン補充療法を続けていきたいと思っていますが、医師からは「症状が治まっているのなら、一旦やめて様子をみましょう」と言われています。がん検診などはきちんと受けています。病院を変えるべきでしょうか?


(49歳・女性)

1年続けた女性ホルモン補充療法、いつまで続けるべき?泌尿器科医に聞いてみた_img0
 


女性泌尿器科専門医・関口由紀先生の回答

A. 続ける、辞める。どちらにもメリットとデメリットがあります。
説明を受けて自分の意志で決められる医療機関を探すべきでしょう。


女性ホルモン補充療法については、2007年の大規模な研究で、血液凝固が進み血栓症が多くなるというリスクの報告がありました。そのため、一旦60歳以上の女性には補充しないという流れになったのです。しかし、最近では適切な管理のもとに女性ホルモン補充を継続しても問題ないと言われています。ご相談者の方が、現在も年に1度の、乳がん・子宮がん検診を受けているのであればより安心です。

 


女性ホルモン補充を続ける場合は血栓ができないよう、日常生活でちょっと気をつけることが大切です。年を取れば誰でも血栓はできやすくなりますので、意識するに越したことはありません。いわゆる血液をサラサラに保つには、EPAやDHAを摂取しましょう。青魚の油に多く含まれる必須脂肪酸です。そして、脱水症にならないよう1日1.5ℓ〜2ℓくらいを目安に水分を意識して補給しましょう。

このように生活習慣に気をつけながら、女性ホルモン補充を一生続けるのもひとつの選択です。骨・皮膚・外陰部の健康維持には、女性ホルモン補充は、圧倒的な強みがあります。一方60歳前後でやめて、漢方や食生活で大豆や山芋などをより積極的に食べるようにするのもありです。どちらを選択するかは、あくまでもご自身の意志。自分の遺伝的な傾向(母・祖母の高齢期がどのようだったか)も考えて、メリット、デメリットの提示を受けた上で、ご自身の意志で治療を決められる病院に変えたほうがよいかと思います。確かに、日本のドクターはホルモン補充療法に消極的な方が大半なのが現状ですが……。

最近は、年齢に関係なく、強いストレスによる女性ホルモン低下によってGSM(閉経関連尿路生殖器症候群)に悩む方が増えてきます。デリケートゾーンの不快感・尿のトラブル・セックスの時の痛みが症状です。気になる方は、早めに女性ホルモン補充を検討するべきです。全身投与に抵抗がある方は、局所投与という選択肢もあります。

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関口 由紀(せきぐちゆき)

日本では数少ない女性泌尿器科専門医。「女性の身体は、全身的に診ていく必要がある」と、婦人科、女性泌尿器科、内科、漢方内科、乳腺科、皮膚科、美容皮膚科、などを揃えた女性医療クリニックLUNAグループを横浜と大阪に展開中。 『女性医療クリニックLUNA(横浜元町)』は、2018年9月にリニューアルオープン。心身の悩みを抱える女性の相談窓口として、わかりやすさを重視。フロアごとに生殖年齢と更年期以降とに外来が分けられている。2F:女性医療クリニックLUNA横浜元町は生殖年齢女性向けの健康管理中心。3F:女性医療クリニックLUNA ネクストステージは更年期以後の女性の美と健康をサポートする攻めの抗加齢医療を行っている。


取材・文/熊本美加
構成/片岡千晶(編集部)


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