こんにちは、エディターの昼田です。
「おしゃれになりたい!」
ファッションエディターの仕事に飛び込んだ大学四年生のときからずっと思ってきました。
はじまりは編集プロダクションのアルバイトからのスタートでしたが、人手が足りず、アシスタント期間もそこそこに一人立ち。”習うより慣れろ”というスパルタ上司のおかげで、いち早く経験は積めたけれど、当時は心底キツかったですよ。
編集のイロハも理解できていない人間が、いきなり経験豊富なプロフェッショナルの輪に入るわけですから、そのプレッシャーたるや……!
当然、いいディレクションができるはずもなく。出来上がった写真に対して、デスクが言い放った言葉は、20年たった今でもしっかり覚えています。
「こんなダサいページを作るのは、あなたがダサいからよ!!!!」
もうね、心が見事にえぐられましたよ……本当に。悲しかったなぁ。
その日を境に「なんとしてでもおしゃれになろう!」と決意したわけです。いろんな服が着たくて、20代の頃は洋服代で給料が吹っ飛ぶなんてこと、ザラにありましたね(笑)。
そんなおしゃれ狂だった私が、クローゼットの片付けを機に、洋服への執着がごっそりとなくなってしまった。もちろん「洋服が好き」という気持ちは変わらないけど、「おしゃれになりたい!」という願望はまるっきりなくなりました。
で、ふと思ったわけです。
あんなに私が執着していた「おしゃれ」とは一体なんなのか。
自分なりの答えが出たのは、この本を読んだときです。
個性的なアイテムを難なくまとめ上げる独特のセンス。すごいなぁって思います。シンプル派の私からしたら正反対です。
パラパラめくりながら、私が真似できそうなコーディネートを探してみたら、唯一発見できました。
グレーのワントーンでまとめたコーディネート。これなら私もトライできそう! なんて思いながら、見出しには
「なんか物足りないなぁ……」
と滝藤さんのキモチが書いてあるわけですよ。
ハッとしました。
たしかに、滝藤さんのようなこってり派からしたら私の服装は、つまんないでしょうし、おしゃれしている部類にも入れてもらえないかもしれない。
同じように、あっさり派の私からしたら、滝藤さんの格好は言葉は悪いですが、「やりすぎ」とも言えるかもしれない。
でもね、あっさり派もこってり派も、どっちもあっていいと思いませんか。ラーメンの味に例えるならどっちも正解。なのに、どっちがうまいかという論争を繰り広げること自体がナンセンスですよね。
服も同じ。
「おしゃれ」か「おしゃれじゃない」か。視点が違えば、どっちにもなりうるのです。おしゃれに上も下もない。勝手なラベリングに、一喜一憂しなくていいのです。
私と滝藤さん。服のテイストは違うけれど、共通していることがあるとしたら、自分の価値観で選び、着ているものに満足していること。そして、他人に評価を求めていないことも。
もしも誰かに「ダサい」と言われてもいいんですよ。私は私だから。
次回に続きます。
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撮影・スタイリング・文/昼田祥子
構成/出原杏子
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