セックスの価値観をリセット②「セックスレスの原因と対策」
女性向け風俗は、
いわばテーマパーク!?
森林:性欲を外で解消しようとする場合、いまの日本には、出会い系や女性向け風俗といった選択肢もあります。特に女性用風俗は、この4年ほどで、日本全国、風営法に届け出がある店だけでも、約100軒だったものが400〜500軒に増えたのだとか。
−−− そんなにあるんですね!
森林:女性用風俗は、まさに映画『娼年』のような世界で、大抵はホテルなどで性的サービスを施されるスタイルです。ただ、映画のなかでは必ずセックスをしていましたが、実際には挿入はなく、性感マッサージなどもう少し内容にバリエーションがあります。
これは女性用風俗ライターさんから伺った話ですが、男性セラピストとホテルに入ると、まずはアンケートを記入するそうです。「タッチしてもいい場所」という項目が細かくあり「首から下だけ」か「首から上まで全部」といった選択もできるのだとか。それはつまり、肉体的な快感が欲しいだけなら「首から下」、でも、キスをされてもいいと思っている時は「全部」を選べるということです。セラピストたちは、サービス業として“喜ばせる力”に長けているそうで、「素晴らしいホスピタリティを見せてくれる」と言っていました。ちなみに、客層については「身綺麗な人が多い」そうですよ。
−−− 身綺麗な人…。お金も掛かることでしょうしね。性風俗はお金が介在しているぶん、不倫より罪悪感が薄そうな気がします。でも一般的に、たぶん女性にとっては、不倫より風俗のハードルの方が高い。
森林:社会的な価値観で見れば、女性が性欲に積極的であることは、未だに恥ずかしいこととされていますが、誰よりもその価値観に縛られているのは、実は女性自身なのかもしれません。でもその価値観から離れれば、もっと自由に性やセックスを楽しみ、充実させられるのではないでしょうか。
たとえばみなさんは、テーマパークは好きですか? 作り物の人形だとわかっていてもキャラクターに会えたらテンションが上がり、夢の国を楽しめますよね。性風俗の楽しみ方は、その感覚に似ています。その場だけの楽しみを瞬間的に味わって、一歩外へ出たら日常に戻るのです。
新たな男女の関係性。
「フラート」でドキドキ感を味わう
−−− 結局、性欲を外に求めるなら、風俗がいちばん安心できるということになるでしょうか…。
森林:うーん、ただ僕は、本当はもっと気軽な“出会いの場”があればいいと思っているんです。下心云々ではなく、自分の世界を広げられるような場所。世界が広がれば、パートナーや家族に依存することもありませんから。
−−− それはたとえば、どんな場所なのでしょう?
森林:宗教人類学者の植島啓司先生が「誘惑バー」という興味深いイベントを催されているそうです。
「セックスはしない」というルールのもと、誘惑すること自体を目的としたイベントで、視線を絡ませたり、囁き合ったり、触れたり、手を繋いでみたり、いわば“イチャイチャすることを楽しむ場”なのだそうです。
植島先生がおっしゃるには、日本の男女関係は“友人か恋人”の2択になってしまっている。一方、アメリカでは「フラート」という概念があり、それは日本語で訳すなら“恋愛の前段階における親しげな行為”。日本では、男女が出会い、好意を抱くと、すぐに「セックスするか?」「つき合うか?」ということにばかりとらわれてしまいますが、でも実は、その前段階のドキドキしている時間こそが魅力的な領域だと。何か結論を出すためではなく、純粋にドキドキする行為を満喫することが、“フラートを楽しむ”ということなのです。
セックスレスで悩んでいる女性のなかには、「ときめきが欲しい」「ドキドキしたい」という方も多いですよね。日本でもこの「フラート」という概念が広まっていくと、もっと気軽にガス抜きができるのかもしれません。
満足できていなかったからこそ、
宝が眠っているかもしれない
−−− 最後に、やはりセックスレスを夫婦間で解決していくことも考えてみたいのですが。
森林:それにはまず、セックスのやり方を変えてみてはどうでしょう。僕が敬愛する代々木忠監督に教えていただいた、心で繋がるセックスに欠かせない3つの条件をお伝えします。
ひとつは「目を見る。」目は心と繋がっているからです。セックスの最中は意外と目をつむってしまうのですが、目をつむると心がどこかにいっちゃうんですよ。ふたつ目は「相手の名前を呼ぶ。」これは相手の意識をこちらに向かせるためです。朝、人を起こす時にも名前を呼びますが、そのイメージですね。みっつ目は「好きと言葉にする。」“言わなくてもわかる”なんてつまらないです。「好き」と言葉で伝えるほど、言霊が膨らんで、感情がどんどん加速していくはずです。
もしもまだ、夫婦ふたりのセックスでやり残したことがあると感じているなら、この方法を試しながら、できるだけカッコつけず、相手に甘えたり、委ねたりということをしてみてください。そのご夫婦は、もしかしたら、宝を掘り起こしていないだけなのかもしれません。ただそれは…、試してみないことにはわからないですけどね。
次回は、私たちは本当に自分の性欲と向き合えているのか?「女性の性欲」をテーマにお届けします。
森林さんは現在、クラウドファンディングに挑戦中! 産婦人科医の上村茂仁先生とともに、「スマホでみられる中高生向け性教育動画の制作プロジェクト」を実施しています。ご興味のある方はぜひご支援をお願いします!
撮影/浜村達也
取材・文/村上治子
構成/片岡千晶(編集部)
「オトナのための性教育」記事一覧
▼右にスワイプしてください▼
第1回「宋美玄先生と考える「私たち、もっとセックスするべきですか?」」>>
第2回「更年期以降をすこやかに送るために、「自前」にこだわるよりも大切なこと」>>
第3回「マスターベーションを教えられる親子関係をめざして」>>
第4回「デリケートゾーンの新習慣! おすすめケアアイテムをピックアップ」>>
第5回「セックスの価値観をリセット①「挿入主義から解放されよう」」>>
第6回「セックスの価値観をリセット②「セックスレスの原因と対策」」>>
第7回「セックスの価値観をリセット③「自分の性欲と向き合うことの意義は?」」>>
第8回「10代の性の現状と学校の性教育〜日本の性教育のいまと未来〜」>>
第9回「家庭でできる性教育ってどんなこと? 〜日本の性教育のいまと未来〜」>>
第10回「性教育は性の幸福感も語れる多様性を〜日本の性教育のいまと未来〜」>>
第11回「50歳で見つけた自撮りヌードの道 〜熟女がありのままの女性性を肯定する方法〜」>>
第12回「性欲との向き合い方に正解はない 〜熟女がありのままの女性性を肯定する方法〜」>>
第13回「夫婦のセックスレス問題、妻側のリアルな本音【30〜40代読者座談会】」>>
第14回「「コンドームは最低の避妊具⁉︎」驚きの避妊最新事情」>>
第15回「緊急避妊薬の市販化どうなる?中絶件数は年間約16万件で求める悲痛な声」>>
第16回「「熟年世代の性の実態」を東大名誉教授がレポート」>>
第17回「産婦人科医とAV男優が考えた「学校ではできない本当に必要な性教育」とは?」>>
第18回「【正しいマスターベーションのやり方】を子供に教えるには?泌尿器科医に聞いてみた」>>
第19回「1年続けた女性ホルモン補充療法、いつまで続けるべき?泌尿器科医に聞いてみた」>>
第20回「久々の性行為で痛みと出血が。もう性行為はできないの?」>>
第21回「夫婦の性交時間は10分以下!? データでみる40代、50代の性のリアル4つの事情」>>
第22回「恋も性も人生もこじらせているあなたへ、読むべき“恋愛指南書”」>>
第23回「男性風俗とは違う「癒しのサービス」女性向け風俗の現状とニーズ」>>
第24回「【その時、緊急避妊薬が必要だった理由】服用当事者たちの声」>>
第25回「 日本初!セクシュアルアイテムブランドが百貨店にオープンした理由と反響 」>>
第26回「むなしい性交が5割…データでみる40、50代の性のリアル【夫婦間レス4つの事情】」>>
第27回「“常に女性が受け身”がセックスレスを生む。まずは、自分の身体を理解することから」>>
第28回「SNSで話題! 学校の保健の先生が「コンドームソムリエ」になったワケ」>>
第29回「セックスレス解消に効果大。夫婦にぴったりの3つのマッサージ」>>
第30回「40代でデリケートゾーン脱毛に挑戦!【ブラジリアンワックス体験リポート】」>>
第31回「40代でデリケートゾーン脱毛に挑戦!【レーザー脱毛の不安、疑問点を解消します】」>>
第32回「男性がセックスを断る理由「母親に思えて無理」の 裏の本音」>>
第33回「【データでみる不倫の実態】善悪を裁くことはできる?婚外性交をする理由」>>
第34回「男性更年期、女性も知っておきたい3つの症状と対処法」>>
第35回「オーガズムが女性の心と身体の健康に大切な理由【産婦人科医が解説】」>>
第36回「性教育は「セックスを学ぶこと」ではない【大人も学びたい性教育&ジェンダー論】」>>
第37回「家庭でできる性教育「隠れたカリキュラム」とは?」>>
第38回「【デリケートゾーンのケアの常識】お手入れは女性の新生活習慣に」>>
第39回「【デリケートゾーンのケアの常識】これだけは実践したい4つの基本ポイント」>>
第40回「【デリケートゾーンのケアの常識】40代からは膣ケアがトラブル解消に」>>
第41回「【デリケートゾーンのケアの常識】人に言えない、女性器コンプレックスの治療法」>>
第42回「『夫のHがイヤだった。』夫婦でこの本を読めますか?【試し読み付き書籍紹介】」>>
第43回「『夫のHがイヤだった。』セックスは「夫婦の条件」なのか?【試し読み付き書籍紹介】」>>
第44回「『夫のHがイヤだった。』豊かなセックスをかなえるものとは?【試し読み付き書籍紹介】」>>
第45回「わが家の性教育は手遅れ?! 焦った時の頼れる情報サイトがオープン」>>
第46回「日本人のセックスの平均「性交時間は約30分」医師が分析する深刻な男女の溝」>>
第47回「2020年夫婦のセックスレスは5割以上。日本人が性交したくない理由とは?」>>
第48回「セックスの悩みを助長する「誤解だらけの性知識」」>>
- 1
- 2
森林 原人
1979年横浜生まれ。地元では神童と呼ばれ、中学受験で麻布、栄光、筑駒、ラ・サールのすべてに合格し、筑駒に入学。そこで本物の天才たちを目の当たりにし、人生初の挫折を味わう。その後はすべての情熱をエロに傾けるようになり、大学1年の時にAV男優のキャリアをスタート。現在まで業界に数少ないトップ男優としてひた走る。男優歴19年。近年では、オンラインサロン「森林公園」やウェブサイト「リビドーリブ」や講演会などを通じて、性やセックスがもたらす幸福論を発信。今年全国9都市で開催した講演会ツアーも大盛況を博した。著書に『偏差値78のAV男優が考える セックス幸福論』(講談社文庫)、『イケるSEX』(扶桑社)、『8000人を抱いたエリート校出身AV男優・森林原人のケーススタディで学ぶ 「人生最高のセックス」でもっと気持ちよくなる』がある。