7

セックスの価値観をリセット③「自分の性欲と向き合うことの意義は?」

2

自分の気持ちよさを把握して
「快感のトリセツ」を持とう


−−− 性教育もそうですが、結局、私たちは、性について誰からも教わることなく、性と向き合うきっかけがないまま大人になってしまったところがあります。なかでもセックスについては、“生殖”という大義名分から離れつつあり、若い頃のように発情したり、つき合いたての男女のような瑞々しい欲望を持つのも難しい現状があるわけですが…。アラフォーを過ぎて自分の性欲と向き合う意義は、どこにあると思われますか?

森林:ある程度、自分を持っている大人の女性にとって、性欲と向き合うことは、自身を確立することに繋がっていくのではないでしょうか。セックスも、きちんと向き合って卒業していくならそれでいいと思いますが、これまでうやむやにしてきて満足できないままだとしたら、たぶん悔いが残ります。「もっと別の何かがあったんじゃないか?」と考えるようになり、そして、そういう女性たちが「どうやったらイケますか?」と聞いてくるのです。

 

−−− セックスでオーガズムを得られる女性は、実は3割程度とも言われていますよね。アラフォー以降の女性でも、そういったご相談は多いですか?

森林:肉体的な快感の得方についてのお悩みは、多いですね。そういう方は大概、オーガズムを得られている女性のことを「ラッキーでいいなぁ」と羨ましく思うようです。でも、その見方は間違っていますよ。気持ちよくなれる女性たちは、それを偶然得たわけではなく、快感を主体的に掴みに行っている、もしくは解放の仕方を知っているのです。

男性主導のセックスを続けていたら、快感はいつまで経っても男性から与えられるものでしょう。そう思われている男性は一生懸命テクニックを磨こうとしますが、そのテクニックはあくまで“万人に評判のいいもの”であり、あなたに当てはまるとは限りません。100人いれば100通りの気持ちよさがあるのですから、本来であれば、スタート地点は“女性が自分自身の快感のツボを知っていること”であるはずなのです。男性側にとっても、何の前情報もなく「好きにしていいから、気持ちよくしてください」というのは、結構なムチャぶりなんです。言語化できなくても身振り手振りでわかるレベルでいいから、女性のみなさんも最低限の「快感のトリセツ」は用意して欲しいんですよ。

−−− ムチャぶり…、確かにそうですね(笑)。

森林:「旦那や彼氏にどう言えば上手になってもらえますか?」という質問には、「そうではなく、あなた自身の快感を探ることがスタートです」とお答えします。具体的には、まず自分の性器を知り、快感のツボを把握すること。よく「男性に指を入れられて痛かった」と言う話がありますが、最初から「痛くしよう」として触る男性なんて、ひとりもいませんから。自分ではどうしたって実感できないので、女性から教えて欲しいのです。

−−− 自分の性欲を知り、快感を知り、きちんと相手に伝える。どれも充分にできていた気がしません。この年齢にして、こんなにも自分の性の問題点に気づかされるとは…。

森林:ただ、僕が思うに、性について悩むことは、自分と向き合い、本当の意味で他者を認められるターニングポイントに立てるということです。悩み始めることは新しい扉を開けることでもあり、いわば進化への第一歩! そして大事なのは、既存のかたちに当てはめていくだけでは、自分の幸せは得られないということです。これまでは、親や社会や旦那さんやお子さんと、ずっと向き合ってきたかもしれませんが、そろそろ自分という“個”と対峙することを優先してみてもいいのではないでしょうか? 性とセックスは、“人生の主人公を自分に取り戻す”ひとつの手段になります。悩みが生まれたということは、それはきっと、大きなチャンスなのだと思いますよ。

森林さんの性教育動画プロジェクトを応援しませんか?
森林さんは現在、クラウドファンディングに挑戦中! 産婦人科医の上村茂仁先生とともに、「スマホでみられる中高生向け性教育動画の制作プロジェクト」を実施しています。すでに目標達成率は約250%(!)ですが、制作費が増えるほど内容も充実していくそう。リターンのなかには、おふたりの講演に参加できる権利も。ご興味のある方は、ぜひご支援をお願いします!

アイコン画像

森林 原人

1979年横浜生まれ。地元では神童と呼ばれ、中学受験で麻布、栄光、筑駒、ラ・サールのすべてに合格し、筑駒に入学。そこで本物の天才たちを目の当たりにし、人生初の挫折を味わう。その後はすべての情熱をエロに傾けるようになり、大学1年の時にAV男優のキャリアをスタート。現在まで業界に数少ないトップ男優としてひた走る。男優歴19年。近年では、オンラインサロン「森林公園」やウェブサイト「リビドーリブ」や講演会などを通じて、性やセックスがもたらす幸福論を発信。今年全国9都市で開催した講演会ツアーも大盛況を博した。著書に『偏差値78のAV男優が考える セックス幸福論』(講談社文庫)、『イケるSEX』(扶桑社)、『8000人を抱いたエリート校出身AV男優・森林原人のケーススタディで学ぶ 「人生最高のセックス」でもっと気持ちよくなる』がある。


撮影/浜村達也
取材・文/村上治子
構成/片岡千晶(編集部)


「オトナのための性教育」記事一覧
▼右にスワイプしてください▼

第1回「宋美玄先生と考える「私たち、もっとセックスするべきですか?」」>>
第2回「更年期以降をすこやかに送るために、「自前」にこだわるよりも大切なこと」>>
第3回「マスターベーションを教えられる親子関係をめざして」>>
第4回「デリケートゾーンの新習慣! おすすめケアアイテムをピックアップ」>>
第5回「セックスの価値観をリセット①「挿入主義から解放されよう」」>>
第6回「セックスの価値観をリセット②「セックスレスの原因と対策」」>>
第7回「セックスの価値観をリセット③「自分の性欲と向き合うことの意義は?」」>>
第8回「10代の性の現状と学校の性教育〜日本の性教育のいまと未来〜」>>
第9回「家庭でできる性教育ってどんなこと? 〜日本の性教育のいまと未来〜」>>
第10回「性教育は性の幸福感も語れる多様性を〜日本の性教育のいまと未来〜」>>
第11回「50歳で見つけた自撮りヌードの道 〜熟女がありのままの女性性を肯定する方法〜」>>
第12回「性欲との向き合い方に正解はない 〜熟女がありのままの女性性を肯定する方法〜」>>
第13回「夫婦のセックスレス問題、妻側のリアルな本音【30〜40代読者座談会】」>>
第14回「「コンドームは最低の避妊具⁉︎」驚きの避妊最新事情」>>
第15回「緊急避妊薬の市販化どうなる?中絶件数は年間約16万件で求める悲痛な声」>>
第16回「「熟年世代の性の実態」を東大名誉教授がレポート」>>
第17回「産婦人科医とAV男優が考えた「学校ではできない本当に必要な性教育」とは?」>>
第18回「【正しいマスターベーションのやり方】を子供に教えるには?泌尿器科医に聞いてみた」>>
第19回「1年続けた女性ホルモン補充療法、いつまで続けるべき?泌尿器科医に聞いてみた」>>
第20回「久々の性行為で痛みと出血が。もう性行為はできないの?」>>
第21回「夫婦の性交時間は10分以下!? データでみる40代、50代の性のリアル4つの事情」>>
第22回「恋も性も人生もこじらせているあなたへ、読むべき“恋愛指南書”」>>
第23回「男性風俗とは違う「癒しのサービス」女性向け風俗の現状とニーズ」>>
第24回「【その時、緊急避妊薬が必要だった理由】服用当事者たちの声」>>
第25回「 日本初!セクシュアルアイテムブランドが百貨店にオープンした理由と反響 」>>
第26回「むなしい性交が5割…データでみる40、50代の性のリアル【夫婦間レス4つの事情】」>>
第27回「“常に女性が受け身”がセックスレスを生む。まずは、自分の身体を理解することから」>>
第28回「SNSで話題! 学校の保健の先生が「コンドームソムリエ」になったワケ」>>
第29回「セックスレス解消に効果大。夫婦にぴったりの3つのマッサージ」>>
第30回「40代でデリケートゾーン脱毛に挑戦!【ブラジリアンワックス体験リポート】」>>
第31回「40代でデリケートゾーン脱毛に挑戦!【レーザー脱毛の不安、疑問点を解消します】」>>
第32回「男性がセックスを断る理由「母親に思えて無理」の 裏の本音」>>
第33回「【データでみる不倫の実態】善悪を裁くことはできる?婚外性交をする理由」>>
第34回「男性更年期、女性も知っておきたい3つの症状と対処法」>>
第35回「オーガズムが女性の心と身体の健康に大切な理由【産婦人科医が解説】」>>
第36回「性教育は「セックスを学ぶこと」ではない【大人も学びたい性教育&ジェンダー論】」>>
第37回「​家庭でできる性教育「隠れたカリキュラム」とは?」>>
第38回「​【デリケートゾーンのケアの常識】お手入れは女性の新生活習慣に」>>
第39回「​【デリケートゾーンのケアの常識】これだけは実践したい4つの基本ポイント」>>
第40回「【デリケートゾーンのケアの常識】40代からは膣ケアがトラブル解消に」>>
第41回「【デリケートゾーンのケアの常識】人に言えない、女性器コンプレックスの治療法」>>
第42回「​『夫のHがイヤだった。』夫婦でこの本を読めますか?【試し読み付き書籍紹介】」>>
第43回「『夫のHがイヤだった。』セックスは「夫婦の条件」なのか?【試し読み付き書籍紹介】」>>
第44回「『夫のHがイヤだった。』豊かなセックスをかなえるものとは?【試し読み付き書籍紹介】」>>
第45回「わが家の性教育は手遅れ?! 焦った時の頼れる情報サイトがオープン」>>
第46回「日本人のセックスの平均「性交時間は約30分」医師が分析する深刻な男女の溝」>>
第47回「2020年夫婦のセックスレスは5割以上。日本人が性交したくない理由とは?」>>
第48回「​セックスの悩みを助長する「誤解だらけの性知識」」>>

  • 1
  • 2