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「コンドームは最低の避妊具⁉︎」驚きの避妊最新事情

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そして、“日本ではアクセスできない、海外のスタンダード”が多いという点では、イベントのテーマである避妊法も同様です。現在の日本における避妊法は、コンドーム、低用量ピル、IUS(子宮内避妊システム)、IUD(子宮内避妊器具)の4種類。そのうち日本では、9割以上の人がコンドームに頼っているそうですが、早乙女先生に言わせれば「コンドームは、避妊方法としては最低です!」

「コンドームによる避妊の失敗率は、年間2〜15%。この割合は低用量ピルの約10倍にのぼります。現に、中絶をするケースの約半数はコンドームの失敗。何より、コンドームは男性主体の避妊法。でも、妊娠で人生が左右されるのは、女性の方です。たとえ相手の男性と結婚できたとしても、仕事や夢を肩代わりしてもらうことはできないのですから、産むか産まないか、また産みたい時期をコントロールすることは、やはり女性自身が主体となって行うべきなのです。」

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早乙女先生が考える「コンドームが守るもの・阻むもの」。最近は日本でも、避妊法というより性感染症予防のために使用が勧められるようになってきたコンドーム。ただし海外では「夫婦のセックスでコンドームを使用している」と話すと驚かれるそう。早乙女先生いわく「避妊は妻がIUSなどで管理し、性感染症は検査を受ければ問題ないはず。コンドームを付けてセックスするのは、『あなたが好きです』と言いながら手袋をして握手するようなものですよ。」…なるほど納得!

海外に目を向けてみれば、避妊法はかなりバリエーション豊か。日本で扱われていないものが多い現状は、残念さを通り越して不可解ですらあります。

「いまや海外の避妊法の主流は、LARC(long acting reversible contraception)と呼ばれる“一度着けたら放っておいても避妊できる”タイプ。ファーストチョイスは、インプラント(皮下への埋め込み式)とIUS(子宮内避妊システム)。特にIUSは、妊娠を望まない間、入れっ放しにしておくだけで、男性同様に妊娠の心配がなくなります。セカンドチョイスは、注射法、パッチ法、膣内リングですが、前出のインプラントとこの3つは、すべて日本にはありません。サードチョイスでようやく低用量ピルとコンドーム。実はピルも飲み忘れる心配があるため、世界的に見れば、あまり優れた避妊法とは言えないのです。

 

さらに、日本では、避妊は保険と自費が混在。IUSも避妊目的になると自費、且つ相当な高額に。海外では、特に若者には無料で提供される国も多いなか、女性の健康にとって欠かせない避妊と中絶の自費診療は、甚だ疑問と言わざるを得ません。」


性の健康は、すべての人の権利。
優先されるべきは当事者の意志


そもそも性の健康は、年齢や性別に関係なく、すべての人にとっての健康課題。2014年にWAS(世界性の健康学会)によって提唱された『性の権利宣言』では、誰しも“望みうる最高の性の健康”を実現する権利があると謳われています。

「女性の健康を考えるうえで、避妊や中絶を含む生殖に関わることは、非常に大きな要素。にもかかわらず、当事者である女性が周囲の感情論に振り回されることは少なくありません。妊娠〜おめでとう、中絶〜けしからん、出産〜おめでとう、避妊〜けしからん、不妊〜大変だね…、これ医療の現場では全部いりません。 なぜなら、妊娠した瞬間に困る人はたくさんいるし、不妊治療を経て喜んで妊娠しても胎児に問題が見つかって中絶を選ぶ場合もあるし、ふたり目を妊娠しても上の子との間隔が近過ぎて産めないことも。生殖にまつわることは、どれもひとりの女性に連続して起こり得ること。だからこそ、フラットに扱うことが重要なのです。

中絶についての国際学会で、胎児への憐憫や宗教的な懸念が語られることはありません。自分の身体のことを自分で決めることの何が悪いのでしょうか? 女性に限らず、男性もどんなセクシュアリティの人も、人はみんな主体的に生きていいはずです。『My body, My choice』。日本の社会のなかでそれを阻もうとする可視化されていない現象を、少しずつ変えていけたらと思います。」

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“未来の避妊”は、ここまで行くのでしょうか!? マイクロチップを皮下に埋め込むだけで、16年間も避妊効果が持続するという最先端の避妊インプラント。さらに画期的なのは、妊娠したい時期が来たら、手元のリモコンでその効果をオフにできるという最新機能。「2018年に販売開始と言われながら何も聞こえてこないので、現在どうなっているかわかりませんが、いずれにしても将来的にはこんなかたちになっていくんじゃないでしょうか」と早乙女先生。


レポート後編では、IUSユーザーである40代女性の貴重な生の声や、性の先進国スウェーデンを始めとする世界での避妊の環境について、またアフターピルへのアクセス改善の必要性についてお届けします。

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ライター 村上 治子

1973年生まれ。大学卒業後、アパレル商社、広告制作会社を経てフリーライターに。主にファッションと占いの記事を執筆。今後は、更年期や閉経後の性のことについても探っていきます。興味があるのは「女性らしさ」や「コミュニケーションとしてのセックス」。趣味は10年習っているフラ。夫と思春期の息子がいます。

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撮影/ミモレ編集部
取材・文/村上治子
構成/片岡千晶(編集部)

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