14

「コンドームは最低の避妊具⁉︎」驚きの避妊最新事情

0

そして、“日本ではアクセスできない、海外のスタンダード”が多いという点では、イベントのテーマである避妊法も同様です。現在の日本における避妊法は、コンドーム、低用量ピル、IUS(子宮内避妊システム)、IUD(子宮内避妊器具)の4種類。そのうち日本では、9割以上の人がコンドームに頼っているそうですが、早乙女先生に言わせれば「コンドームは、避妊方法としては最低です!」

「コンドームによる避妊の失敗率は、年間2〜15%。この割合は低用量ピルの約10倍にのぼります。現に、中絶をするケースの約半数はコンドームの失敗。何より、コンドームは男性主体の避妊法。でも、妊娠で人生が左右されるのは、女性の方です。たとえ相手の男性と結婚できたとしても、仕事や夢を肩代わりしてもらうことはできないのですから、産むか産まないか、また産みたい時期をコントロールすることは、やはり女性自身が主体となって行うべきなのです。」

早乙女先生が考える「コンドームが守るもの・阻むもの」。最近は日本でも、避妊法というより性感染症予防のために使用が勧められるようになってきたコンドーム。ただし海外では「夫婦のセックスでコンドームを使用している」と話すと驚かれるそう。早乙女先生いわく「避妊は妻がIUSなどで管理し、性感染症は検査を受ければ問題ないはず。コンドームを付けてセックスするのは、『あなたが好きです』と言いながら手袋をして握手するようなものですよ。」…なるほど納得!

海外に目を向けてみれば、避妊法はかなりバリエーション豊か。日本で扱われていないものが多い現状は、残念さを通り越して不可解ですらあります。

「いまや海外の避妊法の主流は、LARC(long acting reversible contraception)と呼ばれる“一度着けたら放っておいても避妊できる”タイプ。ファーストチョイスは、インプラント(皮下への埋め込み式)とIUS(子宮内避妊システム)。特にIUSは、妊娠を望まない間、入れっ放しにしておくだけで、男性同様に妊娠の心配がなくなります。セカンドチョイスは、注射法、パッチ法、膣内リングですが、前出のインプラントとこの3つは、すべて日本にはありません。サードチョイスでようやく低用量ピルとコンドーム。実はピルも飲み忘れる心配があるため、世界的に見れば、あまり優れた避妊法とは言えないのです。

 

さらに、日本では、避妊は保険と自費が混在。IUSも避妊目的になると自費、且つ相当な高額に。海外では、特に若者には無料で提供される国も多いなか、女性の健康にとって欠かせない避妊と中絶の自費診療は、甚だ疑問と言わざるを得ません。」


性の健康は、すべての人の権利。
優先されるべきは当事者の意志


そもそも性の健康は、年齢や性別に関係なく、すべての人にとっての健康課題。2014年にWAS(世界性の健康学会)によって提唱された『性の権利宣言』では、誰しも“望みうる最高の性の健康”を実現する権利があると謳われています。

「女性の健康を考えるうえで、避妊や中絶を含む生殖に関わることは、非常に大きな要素。にもかかわらず、当事者である女性が周囲の感情論に振り回されることは少なくありません。妊娠〜おめでとう、中絶〜けしからん、出産〜おめでとう、避妊〜けしからん、不妊〜大変だね…、これ医療の現場では全部いりません。 なぜなら、妊娠した瞬間に困る人はたくさんいるし、不妊治療を経て喜んで妊娠しても胎児に問題が見つかって中絶を選ぶ場合もあるし、ふたり目を妊娠しても上の子との間隔が近過ぎて産めないことも。生殖にまつわることは、どれもひとりの女性に連続して起こり得ること。だからこそ、フラットに扱うことが重要なのです。

中絶についての国際学会で、胎児への憐憫や宗教的な懸念が語られることはありません。自分の身体のことを自分で決めることの何が悪いのでしょうか? 女性に限らず、男性もどんなセクシュアリティの人も、人はみんな主体的に生きていいはずです。『My body, My choice』。日本の社会のなかでそれを阻もうとする可視化されていない現象を、少しずつ変えていけたらと思います。」

“未来の避妊”は、ここまで行くのでしょうか!? マイクロチップを皮下に埋め込むだけで、16年間も避妊効果が持続するという最先端の避妊インプラント。さらに画期的なのは、妊娠したい時期が来たら、手元のリモコンでその効果をオフにできるという最新機能。「2018年に販売開始と言われながら何も聞こえてこないので、現在どうなっているかわかりませんが、いずれにしても将来的にはこんなかたちになっていくんじゃないでしょうか」と早乙女先生。


レポート後編では、IUSユーザーである40代女性の貴重な生の声や、性の先進国スウェーデンを始めとする世界での避妊の環境について、またアフターピルへのアクセス改善の必要性についてお届けします。

ライター 村上 治子

1973年生まれ。大学卒業後、アパレル商社、広告制作会社を経てフリーライターに。主にファッションと占いの記事を執筆。今後は、更年期や閉経後の性のことについても探っていきます。興味があるのは「女性らしさ」や「コミュニケーションとしてのセックス」。趣味は10年習っているフラ。夫と思春期の息子がいます。

妊娠の疑問に答えてくれるLINEボットがスタート!
『THINK OF HININ』の主催者でもあるNPO法人ピルコンさんが、このたび、LINEボット『ピルコンにんしんカモ相談』をリリース!「妊娠したかも?」と不安になった時や避妊や検査について知りたい時、LINEに相談するだけで、正確な情報を自動応答で即座に返信してもらえます。誰でも何度でも無料で利用可能。ご自身はもちろん、ぜひ、お子さんや若い女性にお伝えして、困った時、そして困る前に正しい情報を得られる場がある安心感を広めていきませんか? 詳しい情報や利用方法は、こちらの紹介ページよりご確認ください。

撮影/ミモレ編集部
取材・文/村上治子
構成/片岡千晶(編集部)

「オトナのための性教育」記事一覧
▼右にスワイプしてください▼

第1回「宋美玄先生と考える「私たち、もっとセックスするべきですか?」」>>
第2回「更年期以降をすこやかに送るために、「自前」にこだわるよりも大切なこと」>>
第3回「マスターベーションを教えられる親子関係をめざして」>>
第4回「デリケートゾーンの新習慣! おすすめケアアイテムをピックアップ」>>
第5回「セックスの価値観をリセット①「挿入主義から解放されよう」」>>
第6回「セックスの価値観をリセット②「セックスレスの原因と対策」」>>
第7回「セックスの価値観をリセット③「自分の性欲と向き合うことの意義は?」」>>
第8回「10代の性の現状と学校の性教育〜日本の性教育のいまと未来〜」>>
第9回「家庭でできる性教育ってどんなこと? 〜日本の性教育のいまと未来〜」>>
第10回「性教育は性の幸福感も語れる多様性を〜日本の性教育のいまと未来〜」>>
第11回「50歳で見つけた自撮りヌードの道 〜熟女がありのままの女性性を肯定する方法〜」>>
第12回「性欲との向き合い方に正解はない 〜熟女がありのままの女性性を肯定する方法〜」>>
第13回「夫婦のセックスレス問題、妻側のリアルな本音【30〜40代読者座談会】」>>
第14回「「コンドームは最低の避妊具⁉︎」驚きの避妊最新事情」>>
第15回「緊急避妊薬の市販化どうなる?中絶件数は年間約16万件で求める悲痛な声」>>
第16回「「熟年世代の性の実態」を東大名誉教授がレポート」>>
第17回「産婦人科医とAV男優が考えた「学校ではできない本当に必要な性教育」とは?」>>
第18回「【正しいマスターベーションのやり方】を子供に教えるには?泌尿器科医に聞いてみた」>>
第19回「1年続けた女性ホルモン補充療法、いつまで続けるべき?泌尿器科医に聞いてみた」>>
第20回「久々の性行為で痛みと出血が。もう性行為はできないの?」>>
第21回「夫婦の性交時間は10分以下!? データでみる40代、50代の性のリアル4つの事情」>>
第22回「恋も性も人生もこじらせているあなたへ、読むべき“恋愛指南書”」>>
第23回「男性風俗とは違う「癒しのサービス」女性向け風俗の現状とニーズ」>>
第24回「【その時、緊急避妊薬が必要だった理由】服用当事者たちの声」>>
第25回「 日本初!セクシュアルアイテムブランドが百貨店にオープンした理由と反響 」>>
第26回「むなしい性交が5割…データでみる40、50代の性のリアル【夫婦間レス4つの事情】」>>
第27回「“常に女性が受け身”がセックスレスを生む。まずは、自分の身体を理解することから」>>
第28回「SNSで話題! 学校の保健の先生が「コンドームソムリエ」になったワケ」>>
第29回「セックスレス解消に効果大。夫婦にぴったりの3つのマッサージ」>>
第30回「40代でデリケートゾーン脱毛に挑戦!【ブラジリアンワックス体験リポート】」>>
第31回「40代でデリケートゾーン脱毛に挑戦!【レーザー脱毛の不安、疑問点を解消します】」>>
第32回「男性がセックスを断る理由「母親に思えて無理」の 裏の本音」>>
第33回「【データでみる不倫の実態】善悪を裁くことはできる?婚外性交をする理由」>>
第34回「男性更年期、女性も知っておきたい3つの症状と対処法」>>
第35回「オーガズムが女性の心と身体の健康に大切な理由【産婦人科医が解説】」>>
第36回「性教育は「セックスを学ぶこと」ではない【大人も学びたい性教育&ジェンダー論】」>>
第37回「​家庭でできる性教育「隠れたカリキュラム」とは?」>>
第38回「​【デリケートゾーンのケアの常識】お手入れは女性の新生活習慣に」>>
第39回「​【デリケートゾーンのケアの常識】これだけは実践したい4つの基本ポイント」>>
第40回「【デリケートゾーンのケアの常識】40代からは膣ケアがトラブル解消に」>>
第41回「【デリケートゾーンのケアの常識】人に言えない、女性器コンプレックスの治療法」>>
第42回「​『夫のHがイヤだった。』夫婦でこの本を読めますか?【試し読み付き書籍紹介】」>>
第43回「『夫のHがイヤだった。』セックスは「夫婦の条件」なのか?【試し読み付き書籍紹介】」>>
第44回「『夫のHがイヤだった。』豊かなセックスをかなえるものとは?【試し読み付き書籍紹介】」>>
第45回「わが家の性教育は手遅れ?! 焦った時の頼れる情報サイトがオープン」>>
第46回「日本人のセックスの平均「性交時間は約30分」医師が分析する深刻な男女の溝」>>
第47回「2020年夫婦のセックスレスは5割以上。日本人が性交したくない理由とは?」>>
第48回「​セックスの悩みを助長する「誤解だらけの性知識」」>>

  • 1
  • 2