21

夫婦の性交時間は10分以下!? データでみる40代、50代の性のリアル4つの事情

17

3.夫婦の触れ合いが減っている


夫婦間で性交渉以外によくする身体的な触れ合いについての質問では、一番多かったのは、「肩もみ・指圧・マッサージ」でした(苦笑)。愛情表現としての触れ合いが、いかに少ないかがわかります。

「日本は離れてお辞儀をする文化なのかと思いましたが、単身者のカップルは、『手をつなぐ』を筆頭に『キスをする』『身体に触る』など、どれも5割以上。とてもイチャイチャしていました。これは、ご夫婦も見習ってもいいかもしれませんね。とはいえ、日本では夫婦は家庭では母親・父親役割にシフトしてしまい、スキンシップが少ないです。しかも、住環境や働く条件で、夫婦二人だけの時間がなかなか持てません。海外では8時になったら子供は子供部屋に返して、あとは夫婦の時間を過ごします。夫婦で外出するのに、子どもをベビーシッター預けることも普通ですが、日本は未だに否定的。カップル文化が育ちにくいのもセックスレス増加の要因だと思います」

夫婦の性交時間は10分以下!? データでみる40代、50代の性のリアル4つの事情_img0
※40-70代までの総計の数値

 

夫婦の性交時間は10分以下!? データでみる40代、50代の性のリアル4つの事情_img1
※40-70代までの総計の数値
夫婦の性交時間は10分以下!? データでみる40代、50代の性のリアル4つの事情_img2
※40-70代までの総計の数値

性交渉においても、有配偶者と単身者の女性は大きな違いがありました。単身者の場合は女性から求める割合が増え、大半が前戯をし、セックスの時間も長かったのです。夫婦間のセックスにかける時間は5分~20分に比べ、単身者は30分~1時間。満足度も明らかに格差がありました。

 

「女性がオーガズムを得る、心地良いと感じるセックスには、ある程度は時間が必要です。それなのに、妻は夫になんとなく身体をまさぐれて「はい、おしまい」。『妻の体をつかったマスターベーション』と揶揄される程、自分の欲望を満たすだけのお粗末なセックスでは、女性がノーを出すのは当然。セックスが気持ちよく、おいしいものであれば「疲れた」「メンドクサイ」は吹き飛びます。男性は女性の体を解っていないので、女性側も自分はどこで感じて、どうされるのが気持ちいいのかを、伝えてみるべきです。言葉で伝えるのは難しいなら、身振りや声で表現。自分の手で誘導するのもアリ。お互いに心地良いポイントを伝え合えば、夫婦間のセックスをおいしく変換できます」

セックスレスの判断基準は、単に挿入の回数ではなく、愛情を確認する「質」を含めて考えるべきなのです。女性は、日々のイライラやモヤモヤが、セックスや優しい触れ合いや、思いやりのある態度でも、ふわーと消えていくことがあります。女性の性欲は挿入がなくても、精神的に充分に満たされるのです。しかし、男性は「セックス=挿入」という考え方が未だに強く、女性側の気持ちとの乖離は大きいようです。

夫婦の性交時間は10分以下!? データでみる40代、50代の性のリアル4つの事情_img3
 


 

4.マスターベーションは増えている

夫婦の性交時間は10分以下!? データでみる40代、50代の性のリアル4つの事情_img4
 

婚外性交が増えているデータを見ていると性欲は後退していないことに気が付きます。その証拠にマスターベーション率は増加しています。2000年と比較すると、「よく/ときどきする」割合と2012年調査の「月2~3回以上」割合を比べると、男性はどの年代でも増加、女性では50代が増加していました。
「マスターベーションは、かつてはいけないことのように思われていましたが、今は『セルフ・プレジャー』と呼ばれ、パートナーの有無を問わず、自分の性欲をコントロールする大切な行為です。最近はいわゆるおかずが、スマホでも簡単に手に入りますから、『妻のご機嫌を伺うより、よっぽど気楽』という男性側の声も耳にします……。とある訪問介護のヘルパーさんから伺った話ですが、80代のご婦人が、亡きご主人の若かりし頃の写真を見てマスターベーションしていた姿を見かけたそう。女性は過去の思い出や音楽でも恍惚感を得ることができるように、エロスのとらえ方が幅広いです。閉経後でもパートナーや憧れの男性がいればその刺激で性欲が湧いてきます。女性の身体は不思議です」
 

セックス=挿入ではない! コミュニケーションとしての触れ合いが大切


「夫婦の双方の思いが通じていれば、セックスレスでも何ら問題はありません。セックス以外にも一緒に楽しめることはたくさんあります。しかし、双方の思いが食い違っている場合問題になります。『わたしは、ほんとは欲しい』『僕は求めているし、応えてほしい』と、お互いに率直に話せていないはずです。なかなか、本音で語れない性の問題ですが、お互いに不満や寂しさを抱えているなら、二人の関係性を根本的に見直してみましょう」

女性側はセックスレスで「女として見てもらえない」と悩むように、男性側は「セックス=挿入」という意識で自分を追いつめている可能性もあります。たった一度のセックスの失敗で、ちょっとした女性の態度やまなざしで、「男のプライド」が強く傷つき、妻だけEDになってしまうほどにナイーブな存在であることもお忘れなく。

「性的なコミュニケーションの土台は日々の夫婦関係です。自分は相手のことをわかっているのかな。自分の感情を伝えられているのかな。少し点検してみましょう。お互いに日々の生活に不満がある場合、自分より相手の苦労は低く見積もってしまいがち。伝え合うことを意識してください」

結婚が性生活とイコールではなくなった今、夫婦間の性のあり方も多様化していくでしょう。

アイコン画像

荒木 乳根子先生

日本性科学会セクシュアリティ研究会代表、田園調布学園大学名誉教授、臨床心理士、公認心理師、日本老年行動科学会常任理事。筑波大学大学院修士課程修了。著書『在宅ケアで出会う高齢者の性』『Q&Aで学ぶ高齢者の性とその対応』『カラダと気持ち』『セックスレス時代の中高年「性」白書 』など。


取材・文/熊本美加
構成/片岡千晶(編集部)


「オトナのための性教育」記事一覧
▼右にスワイプしてください▼

第1回「宋美玄先生と考える「私たち、もっとセックスするべきですか?」」>>
第2回「更年期以降をすこやかに送るために、「自前」にこだわるよりも大切なこと」>>
第3回「マスターベーションを教えられる親子関係をめざして」>>
第4回「デリケートゾーンの新習慣! おすすめケアアイテムをピックアップ」>>
第5回「セックスの価値観をリセット①「挿入主義から解放されよう」」>>
第6回「セックスの価値観をリセット②「セックスレスの原因と対策」」>>
第7回「セックスの価値観をリセット③「自分の性欲と向き合うことの意義は?」」>>
第8回「10代の性の現状と学校の性教育〜日本の性教育のいまと未来〜」>>
第9回「家庭でできる性教育ってどんなこと? 〜日本の性教育のいまと未来〜」>>
第10回「性教育は性の幸福感も語れる多様性を〜日本の性教育のいまと未来〜」>>
第11回「50歳で見つけた自撮りヌードの道 〜熟女がありのままの女性性を肯定する方法〜」>>
第12回「性欲との向き合い方に正解はない 〜熟女がありのままの女性性を肯定する方法〜」>>
第13回「夫婦のセックスレス問題、妻側のリアルな本音【30〜40代読者座談会】」>>
第14回「「コンドームは最低の避妊具⁉︎」驚きの避妊最新事情」>>
第15回「緊急避妊薬の市販化どうなる?中絶件数は年間約16万件で求める悲痛な声」>>
第16回「「熟年世代の性の実態」を東大名誉教授がレポート」>>
第17回「産婦人科医とAV男優が考えた「学校ではできない本当に必要な性教育」とは?」>>
第18回「【正しいマスターベーションのやり方】を子供に教えるには?泌尿器科医に聞いてみた」>>
第19回「1年続けた女性ホルモン補充療法、いつまで続けるべき?泌尿器科医に聞いてみた」>>
第20回「久々の性行為で痛みと出血が。もう性行為はできないの?」>>
第21回「夫婦の性交時間は10分以下!? データでみる40代、50代の性のリアル4つの事情」>>
第22回「恋も性も人生もこじらせているあなたへ、読むべき“恋愛指南書”」>>
第23回「男性風俗とは違う「癒しのサービス」女性向け風俗の現状とニーズ」>>
第24回「【その時、緊急避妊薬が必要だった理由】服用当事者たちの声」>>
第25回「 日本初!セクシュアルアイテムブランドが百貨店にオープンした理由と反響 」>>
第26回「むなしい性交が5割…データでみる40、50代の性のリアル【夫婦間レス4つの事情】」>>
第27回「“常に女性が受け身”がセックスレスを生む。まずは、自分の身体を理解することから」>>
第28回「SNSで話題! 学校の保健の先生が「コンドームソムリエ」になったワケ」>>
第29回「セックスレス解消に効果大。夫婦にぴったりの3つのマッサージ」>>
第30回「40代でデリケートゾーン脱毛に挑戦!【ブラジリアンワックス体験リポート】」>>
第31回「40代でデリケートゾーン脱毛に挑戦!【レーザー脱毛の不安、疑問点を解消します】」>>
第32回「男性がセックスを断る理由「母親に思えて無理」の 裏の本音」>>
第33回「【データでみる不倫の実態】善悪を裁くことはできる?婚外性交をする理由」>>
第34回「男性更年期、女性も知っておきたい3つの症状と対処法」>>
第35回「オーガズムが女性の心と身体の健康に大切な理由【産婦人科医が解説】」>>
第36回「性教育は「セックスを学ぶこと」ではない【大人も学びたい性教育&ジェンダー論】」>>
第37回「​家庭でできる性教育「隠れたカリキュラム」とは?」>>
第38回「​【デリケートゾーンのケアの常識】お手入れは女性の新生活習慣に」>>
第39回「​【デリケートゾーンのケアの常識】これだけは実践したい4つの基本ポイント」>>
第40回「【デリケートゾーンのケアの常識】40代からは膣ケアがトラブル解消に」>>
第41回「【デリケートゾーンのケアの常識】人に言えない、女性器コンプレックスの治療法」>>
第42回「​『夫のHがイヤだった。』夫婦でこの本を読めますか?【試し読み付き書籍紹介】」>>
第43回「『夫のHがイヤだった。』セックスは「夫婦の条件」なのか?【試し読み付き書籍紹介】」>>
第44回「『夫のHがイヤだった。』豊かなセックスをかなえるものとは?【試し読み付き書籍紹介】」>>
第45回「わが家の性教育は手遅れ?! 焦った時の頼れる情報サイトがオープン」>>
第46回「日本人のセックスの平均「性交時間は約30分」医師が分析する深刻な男女の溝」>>
第47回「2020年夫婦のセックスレスは5割以上。日本人が性交したくない理由とは?」>>
第48回「​セックスの悩みを助長する「誤解だらけの性知識」」>>

  • 1
  • 2