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性教育は「セックスを学ぶこと」ではない【大人も学びたい性教育&ジェンダー論】

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国際基準は5歳から。幼い頃にこそやっておくべき性教育


星野:国連教育科学文化機関(ユネスコ)が発表している「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」というものがあるのですが、ここで定められた性教育の開始年齢って5歳なんですよね。

――ご、5歳ですか!

星野:この「レベル1」の年齢では、「精子と卵子の結合で赤ちゃんが生まれる」という生殖の基本や、「家族は多様な形を取りうること」「プライベートゾーンの大切さ」などの項目を学ぶことになっています。しかし、日本の性教育はこのガイドラインに則っていない。そういうこと全部すっ飛ばして、中学年の保健の授業でいきなり生理の話から始まるわけですよ。でもそれくらいの年齢になると、すでに変な先入観を持ってしまっていて、子どもたちが「ぷぷっ」と笑っちゃう感じになってしまうんですよね。

小島:「性の話」じゃなく「エロの話」になっちゃってる。本当はそういう先入観を持つ以前、「なんでセミは鳴くの?なんでバッタは跳ねるの?」と同じレベルで、性についての素朴な疑問にこたえてあげられるといいですよね。我が家では実際に、上の子が小学校1年生の時に「なんで僕のちんちんは固くなるの?」と聞かれました。自動販売機に貼られていたビキニの女性を見ると、いつもちんちんが固くなる、って。だから「女の人を素敵だなと思ったときなどにおちんちんがそうなるのはよくあること。でもそれを聞いてびっくりしちゃう子もいるから、面白がって言わないようにしようね」と。「ふうん」と言っていましたが、もしこれが小学3年生くらいだったらもっと違っていたかもしれませんね。
これと同時に意識したいのは、聞かれた親の反応によっては、間違ったメッセージを与えてしまうことです。実は私の母親がそうで、生物の生殖にまつわる話ですら「なんていやらしい!」と過剰反応する人だったんです。だから私はそういう態度だけはとるまいと。「あなたの言っていることは、いやらしいことでも恥ずかしいことでもなんでもない」ということを伝えたくて。

 

星野:お母さんの反応が、反面教師になったんですね。

小島:親が、性を商品化されたセックスとしか捉えられないのは問題ですよね。「セックス=下世話なエロ、快楽」と思い込んでいるので「性教育=エロ教育」と思ってしまう。性に関する知識を「子どもに見せてはいけないもの」と思ってしまうんです。

星野:そうじゃないということを、大人が理解しないといけませんよね。私が大事にしていることは、価値のインストラクション──なぜ学ぶ必要があるのか、学ぶことにどのような価値があり、学ぶとどんないいことがあるのかを、学習の最初に子どもたちに丁寧に伝えることです。
「性の多様性を学ぶことで、自分と異なる他者と豊かな人間関係を築ける。そしてともに豊かな社会を作り上げられる人になれる、子どもたちにはそういう人になってほしい」――私はそんな願いを込めて、性の多様性の教育をしているし、その思いは保護者にも子どもたちにも繰り返し伝えるようにしています。そこが先生の本気の見せ所。家庭であれば、親御さんの本気の見せどころでもあります。大人の本気は必ず子どもに伝わりますから。


第2回目対談記事「 家庭でできる性教育「隠れたカリキュラム」とは?【大人も学びたい性教育&ジェンダー論】 」は8月8日公開予定です。

撮影/神谷美寛
取材、文/渥美志保
構成/川良咲子

小島慶子さんのインタビューはこちら>>


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