セックスの悩みを助長する「誤解だらけの性知識」
女性の「濡れにくい」という悩みは“膣から出る汗”が関係
濡れにくい、というのも女性特有の悩みのひとつです。
「セックスで興奮すると、膣壁の毛細血管に血液が集まってくるのですが、その量が限界を越えると、血液中の成分が外に流れ出てきます。いわば汗のようなものです。この汗が“濡れる、濡れない”を左右しています。
そのため、膣の毛細血管が硬くなる、つまり動脈硬化が起きてくると濡れにくくなるのです。もし性行為中に女性が濡れにくい、ということでしたら、動脈硬化の初期症状の可能性もあるので、要注意です。
また、痛みを感じることがあればリューブゼリーなどで潤いを補うなど、自分のデリケートゾーンにもっと関心を持ってケアをしてください」(北村先生)。
締まるのがいい、のは大間違い
また、よく誤解されていることのひとつが、膣が締まったほうが性交時に男性側が快感を得られやすいということ。
「上のイラストをみてください。性的興奮が高まってくると、実は女性の膣は締まるどころか、テント状・風船状に形が変化するのです。
さらに、膣の入口には“オーガズムプラットフォーム”が形成されます。膣が長く伸び幅も広がるので、男性のペニスはゆるさを感じます。実はこれこそが二人の関係がフィットしているという状態。
膣で締め付けたり、締まっているほうがいいというのは間違った認識で、本当は逆です。産後の女性の膣がゆるくなるのも、お産の影響がないわけではありませんが、二人の関係がフィットした結果とも言えます」(北村先生)。
マスターベーションがセックスの悩みを解決する
「もしあなたが本当に気持ちのいいセックスを経験したいなら、マスターベーションをおすすめします。自分の体は自分が一番よく知っていますので、女性も自分の身体の頭の先から足の先まで触れて、快感ポイントはどこなのか探ってみましょう。
パートナーがいるなら、相手にその場所を教えてあげてください。セックスは学習の成果と前述しました。いいセックスを実現するには、教え合うことが大事なのです。
人間は60兆個の細胞の組み合わせ。その掛け合わせはワンパターンではありません。二人の関係性の中で、計り知れないものを探ることを楽しむのがセックスの意義。誤解だらけの性知識が、結果的に二人の関係を狭め、遠ざけていると思うのです」(北村先生)。
女性側のセックスについて取り上げると、「そんなにしたいの?」「その年で、エロボケ?」といったコメントが飛び交います。
ですが、性別年齢にかかわらず、好きな人に近づきたい、触れたいという衝動は自然なこと。「家庭も仕事も向上心を持って取り組む女性達が、なぜかセックスにだけは消極的だとしたらもったいないこと」と北村先生は言います。
「パートナーや大切な人との、スキンシップはとっても大事。脳内では幸せホルモンのオキシトシンやセロトニンが活性化されます。そして自己肯定感が高まれば、ハッピー気分で免疫力もアップ。心の動きに体が自然に反応しますから、まずは頭で考えすぎず、人と比べないこと。
自分と相手が気持ちいいかを最優先に、触れ合いのあるコミュニケーションを今一度、意識してみてはいかがでしょうか?」(北村先生)。
構成/片岡千晶(編集部)
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北村邦夫
群馬県渋川市に生まれ。自治医科大学を一期生として卒業後、群馬県庁に在籍するかたわら、群馬大学医学部産科婦人科教室で臨床を学ぶ。1988 年(昭和 63 年)から日本家族計画協会クリニック所長。現在一般社団法人日本家族計画協会会長/理事長/家族計画研究センター所長、日本思春期学会名誉会員、日本母性衛生学会常務理事など。著書には「ピル」(集英社新書)、「セックス嫌いな若者たち」(メディアファクトリー新書)。「ティーンズ・ボディーブック(新装改訂版)」(中央公論新社)、「入門百科プラス 女の子、はじめます。」(小学館)、「みんなこうなるの? おとなになるためのベストアンサー 71 の Q&A」(講談社)など多数。現在、毎日新聞で「Dr.北村が語る現代思春期」、朝日新聞アピタルで「あなたを守る性のはなし」連載中