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オーガズムが女性の心と身体の健康に大切な理由【産婦人科医が解説】

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オーガニズムが心身に与える影響とは?


「オーガズムに達しないとヒステリーを起こす」。
これはあながち誇張ではありません。精神分析の祖と言われるフロイトは、女性が無意識に抑圧している(主に性的な)欲求を、身体症状として発散する症状がヒステリーだと指摘しています。精神分析で心因(真因)に気付けば、ヒステリーは解消されます。

 

では身体的にはどうでしょうか。人間は性的に興奮すると、男女共に性器周辺の血管が拡張し、充血が起こった後、筋肉の誇張、そしてオーガズム反射が起こります。
興奮反応では外陰、膣を含む骨盤内の充血によって、腫れぼったい状態になります。これ自体は心地良いものですし、オーガズムが起こるとこの充血は速やかに解消します。

ところがオーガズムがないまま放置すると、充血の解消には時間がかかり、いつまでもスッキリしません。男性が射精せずに終わると、勃起状態からもとに戻るのに時間がかかるのと同じです。これを繰り返すと、骨盤内のうっ血が慢性化して「しこり」となり、痛みさえ感じるようになる。これが「骨盤内うっ血症候群」の原因という説があります。


骨盤内うっ血症候群とは?


婦人科外来では、腰回りの鈍痛を訴えながらも炎症や腫瘍など明らかな原因がなく、内診で子宮を圧迫すると痛みがある場合、「骨盤内うっ血症候群」と診断することがあります。
この痛みの特徴は、寝ている間に生じて、朝、起きるときがピーク。起きて活動していると大抵は収まります。寝腰ともいって、骨や筋肉のトラブルなら疲れる夕方が最も痛く、寝ると改善するのとは真逆です。

この症状は「寝ていると骨盤内には血液がたまって痛みを起こすが、活動して筋肉などに血液が分散すると痛みが軽くなる」と説明できます。必ずしもセックスでのオーガズム不全ばかりではありませんが、骨盤内が循環不全を起こしている状態で、ストレスや偏った生活習慣が原因と思われます。

改めて『ヒステリア』に戻ると、自分だけ射精して「ハイ、おしまい」というセックスする男性は、現在でも少なくないと思われます。
映画の時代には想像を絶する女性蔑視と抑圧があり、女性自身がそれを疑問にも思っていなければ、無意識の不満はヒステリー発作に道を開けるしかなかったかもしれません。女性蔑視や抑圧はセックスだけの問題ではないとしつつも、女性がセックスを主体的に楽しむという目的に戻ると、セックスでオーガズムを得ることもまた健康の重要な要素です。
セックスでオーガズムを得ることは、二人の関係性で大切なことですが、オーガズムはマスターベーションでも得られますし、マスターベーションはオーガズムの体験の入り口でもあります。

使わないと衰える……性機能障害について


若くても使わないと身体機能は劣化します。これは「廃用性萎縮」といって、どの臓器にも起こるので、筋肉の衰えで実感している方は少なからずおられるでしょう。性機能も例外ではありません。そして他の機能と同様に、廃用性萎縮は加齢によって加速します。

セックス(性交あるいはマスターベーション)をしないでいると、神経や血管、筋肉の廃用性萎縮のために一連の性反応が鈍って、性機能障害となることもあります。
パートナーを失った人には、より起きやすいことかもしれませんが、マスターベーションは性反応という点ではほぼ性交と同じですから、廃用性萎縮を予防するという効果もあります。一方、性反応は身体反応だけでなく精神活動にとっても大事な要素です。特に性欲は気分の高揚を伴いますが、これも習慣的に活動していないと「しなくても平気」といった状態に陥りやすくなります。


大川玲子 Reiko Okawa
産婦人科医、医学博士。日本性科学会理事長、同会セックス・セラピスト。千葉きぼーるクリニックで診療するほか、国立病院機構千葉医療センター(非常勤)で性カウンセリングを行う。共著に『セックス・セラピー入門』(金原出版)、著書に『愛せない理由 ドキュメント性カウンセリング』(法研)、『女性のからだと性』(小学館)などがある。

 

 

『中高年のための性生活の知恵』

日本性科学会セクシュアリティ研究会 著 アチーブメント出版 

なぜ自分は拒否されるのか? なぜ求める気持ちになれないのか? 性のスペシャリスト6名が現場で得た知見、そして中高年男女2590人のアンケートからわかった現代日本の性の真実のすべてをまとめた一冊。寂しさとは無縁の第2の新婚期を迎えるために読むべき大人の性教育書。


構成/國見香、片岡千晶(編集部)


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