38

【デリケートゾーンのケアの常識】お手入れは女性の新生活習慣に

1

「見ない」「触らない」では、
トラブルに気づけない。


デリケートゾーンケアをしていないと、どのような問題が起こると考えられるのでしょう?

「女性器は形状的に湿気がこもるため、特に高温の季節はどうしてもムレやすくなってしまいます。排泄器官に近いエリアですから、毛があれば排泄物も絡まりやすく汚れが残ってしまいがち。きちんとケアできていないことでまず心配なのは、雑菌の温床となることです。
繁殖した雑菌が膣内に入り込むと、膣炎になったり臭いの原因となったりすることも。若いうちは膣に潤いがあるため菌の侵入を防ぐことができますが、40代後半になり乾燥が始まると、自浄作用も弱まってしまうため、いっそう注意が必要です。

 

また最近、梅毒という性感染症の急増が話題となっていますが、普段から自分の性器を観察していないと感染症に気づきにくくなるという問題も。梅毒は感染初期に赤い湿疹ができますが、これは放っておくと自然に消えます。
ただしその変化は、治癒ではなく症状が進んだだけ。気づかず放置してしまうことで、いつの間にか悪化していたり、感染を広げてしまったりする恐れがあるのです。

実際にあった別の感染症の例では、『半年前からイボがあり、だんだん大きくなってきてしまった』とおっしゃる患者さんを診察したところ、小陰唇に“ピンポン球×2個”もの大きさの尖圭コンジローマを発見したこともありました。イボなので痛みはありませんが、かなりの違和感はあったはず。日頃からデリケートゾーンを見て、触っていたら、もっと小さいうちに気づけていたでしょう。

日本には、そもそもデリケートゾーンケアをするという教育がありません。むしろ母親から『見ちゃいけない』『触っちゃいけない』と言われて育つため、多くの女性がケアの意識を持たないまま大人になってしまいます。
デリケートゾーンは、ヒダやポケットがたくさんあるところ。おへそだって意識して洗わないとゴミが溜まってしまいますよね。女性器も同じで、お湯でパシャパシャ洗うくらいでは汚れは取りきれません。
まずは、ケアの大切さを意識して、見たり触ったり手で優しく洗うことを当たり前の習慣として捉えることからスタートしていただきたいですね。」

第2回目は、「毎日のケア方法」についてお届けします。

喜田直江(きだなおえ)

平成13年、京都府立医科大学卒業後、産婦人科医として多数の分娩・手術症例を経験。平成15年、形成外科医として形成外科の基本から縫合の技術まで幅広く習得。平成18年大手美容外科にて美容外科・美容皮膚科全般を習得。特に婦人科系の美容手術は日本でも優秀の症例数を誇る。平成23年10月、東京・銀座に「なおえビューティクリニック」を開院。日本形成外科学会会員、日本性科学会会員、ビビーブ認定医、ウルトラヴェラ指導医。著書に『女性器コンプレックス 愛する人と交われない女たちの苦悩』(幻冬舎)がある。

取材・文/村上治子
撮影・構成/片岡千晶(編集部)

前回記事「家庭でできる性教育「隠れたカリキュラム」とは?」はこちら>>


「オトナのための性教育」記事一覧
▼右にスワイプしてください▼

第1回「宋美玄先生と考える「私たち、もっとセックスするべきですか?」」>>
第2回「更年期以降をすこやかに送るために、「自前」にこだわるよりも大切なこと」>>
第3回「マスターベーションを教えられる親子関係をめざして」>>
第4回「デリケートゾーンの新習慣! おすすめケアアイテムをピックアップ」>>
第5回「セックスの価値観をリセット①「挿入主義から解放されよう」」>>
第6回「セックスの価値観をリセット②「セックスレスの原因と対策」」>>
第7回「セックスの価値観をリセット③「自分の性欲と向き合うことの意義は?」」>>
第8回「10代の性の現状と学校の性教育〜日本の性教育のいまと未来〜」>>
第9回「家庭でできる性教育ってどんなこと? 〜日本の性教育のいまと未来〜」>>
第10回「性教育は性の幸福感も語れる多様性を〜日本の性教育のいまと未来〜」>>
第11回「50歳で見つけた自撮りヌードの道 〜熟女がありのままの女性性を肯定する方法〜」>>
第12回「性欲との向き合い方に正解はない 〜熟女がありのままの女性性を肯定する方法〜」>>
第13回「夫婦のセックスレス問題、妻側のリアルな本音【30〜40代読者座談会】」>>
第14回「「コンドームは最低の避妊具⁉︎」驚きの避妊最新事情」>>
第15回「緊急避妊薬の市販化どうなる?中絶件数は年間約16万件で求める悲痛な声」>>
第16回「「熟年世代の性の実態」を東大名誉教授がレポート」>>
第17回「産婦人科医とAV男優が考えた「学校ではできない本当に必要な性教育」とは?」>>
第18回「【正しいマスターベーションのやり方】を子供に教えるには?泌尿器科医に聞いてみた」>>
第19回「1年続けた女性ホルモン補充療法、いつまで続けるべき?泌尿器科医に聞いてみた」>>
第20回「久々の性行為で痛みと出血が。もう性行為はできないの?」>>
第21回「夫婦の性交時間は10分以下!? データでみる40代、50代の性のリアル4つの事情」>>
第22回「恋も性も人生もこじらせているあなたへ、読むべき“恋愛指南書”」>>
第23回「男性風俗とは違う「癒しのサービス」女性向け風俗の現状とニーズ」>>
第24回「【その時、緊急避妊薬が必要だった理由】服用当事者たちの声」>>
第25回「 日本初!セクシュアルアイテムブランドが百貨店にオープンした理由と反響 」>>
第26回「むなしい性交が5割…データでみる40、50代の性のリアル【夫婦間レス4つの事情】」>>
第27回「“常に女性が受け身”がセックスレスを生む。まずは、自分の身体を理解することから」>>
第28回「SNSで話題! 学校の保健の先生が「コンドームソムリエ」になったワケ」>>
第29回「セックスレス解消に効果大。夫婦にぴったりの3つのマッサージ」>>
第30回「40代でデリケートゾーン脱毛に挑戦!【ブラジリアンワックス体験リポート】」>>
第31回「40代でデリケートゾーン脱毛に挑戦!【レーザー脱毛の不安、疑問点を解消します】」>>
第32回「男性がセックスを断る理由「母親に思えて無理」の 裏の本音」>>
第33回「【データでみる不倫の実態】善悪を裁くことはできる?婚外性交をする理由」>>
第34回「男性更年期、女性も知っておきたい3つの症状と対処法」>>
第35回「オーガズムが女性の心と身体の健康に大切な理由【産婦人科医が解説】」>>
第36回「性教育は「セックスを学ぶこと」ではない【大人も学びたい性教育&ジェンダー論】」>>
第37回「​家庭でできる性教育「隠れたカリキュラム」とは?」>>
第38回「​【デリケートゾーンのケアの常識】お手入れは女性の新生活習慣に」>>
第39回「​【デリケートゾーンのケアの常識】これだけは実践したい4つの基本ポイント」>>
第40回「【デリケートゾーンのケアの常識】40代からは膣ケアがトラブル解消に」>>
第41回「【デリケートゾーンのケアの常識】人に言えない、女性器コンプレックスの治療法」>>
第42回「​『夫のHがイヤだった。』夫婦でこの本を読めますか?【試し読み付き書籍紹介】」>>
第43回「『夫のHがイヤだった。』セックスは「夫婦の条件」なのか?【試し読み付き書籍紹介】」>>
第44回「『夫のHがイヤだった。』豊かなセックスをかなえるものとは?【試し読み付き書籍紹介】」>>
第45回「わが家の性教育は手遅れ?! 焦った時の頼れる情報サイトがオープン」>>
第46回「日本人のセックスの平均「性交時間は約30分」医師が分析する深刻な男女の溝」>>
第47回「2020年夫婦のセックスレスは5割以上。日本人が性交したくない理由とは?」>>
第48回「​セックスの悩みを助長する「誤解だらけの性知識」」>>

  • 1
  • 2