たとえば、服を着ただけの状態。ここから鏡を見ながら、あれこれやっていきます。
袖はどのくらいまであげようか、肘まで上げると「快活なイメージ」になるなぁ。いや今日はもう少し上品にしたいから８分袖くらいにしようか。袖口は半分だけ折ってラフな感じにしてみよう。
ワントーンで上下の質感が重たく見えるからニットは前だけインしようか、いや全部インするのがいいか。どっちがバランスよく見えるだろうか。
パンツのウエストの位置はベルトで調整できるから、少し上めで女らしくいくか。いや腰位置まで下げてハンサムな感じで今日ははいてみようか。
こんな感じです。着て終わり、じゃなくて、着てから調理していく。調理して仕上げることに楽しみがあるんです。服はあくまでも材料だから。
かつての私は、大きな刺激ばかりを追い求めるばかりに、目の前にある小さな喜びや感動をとりこぼしていました。何かを買っては束の間のワクワク感に浸って、飽きたらまた次へ。結局のところ自分の内側に問題があったんです。
いま、私のベースにあるのは日々の「小さな満足」です。何を着るかではなくて、どう向き合うか。ルイ・ヴィトンを着たから幸せ、なのではなくて、結局のところルイ・ヴィトンだろうがユニクロだろうが、着る人に服を調理し、味わう気持ちがなければ、何を着たって幸せじゃない。
小さな楽しみはいつだって、今ある服にだってたくさんあるのだと思っています。
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撮影・スタイリング・文／昼田祥子
構成／出原杏子
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