土井善晴さんの『素材のレシピ』の帯にあった、「簡単は手抜きじゃない」という言葉。洋服においてもそれは同じで、トップスにボトムスのような簡単なコーディネートだからといって手は抜けない。ちゃんと見せようと思ったら簡単だけどラクじゃない。
本の写真とともに、こんな気持ちを投稿したら、コメントをくださった方がいたんです。
「私もほんとうは、“時短” “手間なし”とかでなく、ゆっくりじっくり料理がしたいです」
そうだよ、そう。私もそうなんですよ。
私の場合は、料理じゃなくて、ケアだった。日常の中で何か一つでいいから、自分のために丁寧に何かをやりたかったんです。
毎日、毎瞬、何かの目的を達成することに精一杯で、いつも何かに追われているんですよね。目の前のことを味わいもせずに、あっという間に一日が終わる。クリーニング店に出したシャツみたいに、このままだと自分が擦り切れていく。だから私は洋服のケアをしながら、自分自身をケアしていたのだと思います。
丁寧に、時間をかけて洋服のケアをするのは、決して洋服を長持ちさせるためにやっているのではなくて、私が私に戻るために必要なんです。
ある人はお裁縫をしている時間かもしれないし、圧力鍋を使わずに煮込み料理を作る時間かもしれないし、靴を丁寧に磨いている時間かもしれない。みなさんにもきっとあるんじゃないかな。
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撮影・スタイリング・文／昼田祥子
構成／出原杏子
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